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川崎・篠山竜青に涙を流させたもの。
Bリーグの成功を象徴する男の1年間。
posted2017/06/08 07:30
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
Kyodo News
勝った者が偉い。それがスポーツ界の常識だ。
しかしプロリーグが始まった意義は、負けたチームにスポットライトがあたることではないだろうか。
敗戦の理由はどんなもので、敗者の魅力はどこにあったのか――。
川崎ブレイブサンダースと栃木ブレックス、Bリーグの初代王者を懸けてファイナルを戦った2チームには、共通点がある。
まず、Bリーグ開幕後初の天皇杯で、ともに優勝候補でありながら頂点に立てなかったこと。
そして忘れてはいけないのは、開幕戦の敗戦からシーズンをスタートさせたということだ。
とりわけ、昨シーズンのNBL王者だった川崎の場合は、三遠ネオフェニックス相手に2連敗を喫する波乱の幕開けだった。このときは選手だけのミーティングを開き、そこで出された意見をキャプテンの篠山竜青が北卓也ヘッドコーチに伝え、開幕早々に、チームはその後の戦いにつながる大きな分岐点を迎えた。
今回のファイナルは、敗戦を糧にできるプロチーム同士の対戦だった。面白くならないわけがない。
井上雄彦氏も、篠山竜青の健闘を称賛。
とりわけ川崎のファイナルに至る戦いぶりを見れば、プロリーグが出来た意義が確かに感じられる。
その象徴が、篠山だ。キャプテンにして、ポイントガード(PG)。栃木の象徴、田臥勇太と同じ立場にいた選手だ。
実際はチャンピオンシップ(CS)のMVPには古川孝敏が選ばれたが、もしも川崎が勝っていれば、篠山が選ばれただろう。漫画『SLAM DUNK』の作者である井上雄彦氏も、ファイナルのあとにわざわざSNSで彼の健闘を称えていた。
CS6試合のうち、チーム最多得点が3試合。守備ではPGとして最初にスイッチを入れ、ゲームメイクをしながら、これだけの数字を残した。