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バスケ日本男子、歴代最高の成績。
U-19W杯で世界を驚かせた戦法とは。
posted2017/07/12 17:00
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph by
FIBA
「ミラクルを起こそう。世界を驚かせよう」
FIBA U19ワールドカップに出場した男子U19日本代表のヘッドコーチ、トーステン・ロイブルは、大会前からチームにそう発破をかけてきた。
これまで日本の男子代表は、どの年代のチームでも世界トップクラスと互角に戦えたことがない。世界大会に出ることが快挙で、実際に世界レベルを相手にすると勝つどころか、接戦に持ち込むことすらできないという現実を見せつけられてきた。世界を相手に大差をつけられて負け、次に向けてのいい経験ができたと言いながら、継続して世界大会に出ることもできなかった。
そんな現実が、プレーする側にとっても見る側にとっても、当たり前になってきていた。ロイブル・コーチは、そういった既成概念を変えようと、今大会に向けての準備を進めてきたのだった。
元からのケミストリーと八村、榎本のクオリティー。
去年、FIBAアジア U18バスケットボール選手権で準優勝し、U19ワールドカップの出場権を獲得した日本代表にはゴンザガ大に留学した八村塁がいなかった。パンチ力こそ欠いていたが、チーム一丸となって戦うことに長けたチームだった。
それだけに、当初はロイブル・コーチもメンバー入れ替えに慎重だった。一方で、世界と戦うには八村の存在は必要だった。故障者が出たこともあり、八村と、さらに日本代表経験が一度もなく、アメリカの短大でプレーしていた榎本新作(アメリカ名:アイザイア・マーフィー)を加えた。
2人とも大学のスケジュールの関係で大会前のキャンプは途中参加だったが、それでもあえて彼らを選んだ。
ロイブル・コーチは言う。
「去年の私たちの強みは選手の才能やサイズではなく、ケミストリーだった。チームが一丸となって全力で戦った。ただ、(八村)塁とアイザイア(マーフィー)は私たちに特別なクオリティを与えてくれると思ったんだ」
去年の長所であるチーム力を少しだけ犠牲にし、その代わりに、さらに上を目指せる資質を持った選手を加えたわけだ。足りなかったチーム力は大会前の合宿で磨き、さらに大会中にも日に日に向上していった。