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「渋谷」の名を冠したBリーグ1年目。
本拠地・青学の体育館で何を得たか。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph bySUNROCKERS SHIBUYA
posted2017/07/08 09:00
流行の最先端である渋谷区でプロスポーツが開催される。サンロッカーズがBリーグ1年目に果たした役割と意義は大きい。
サンロッカーズ渋谷誕生は、苦肉の策だった。
「サンロッカーズ渋谷」誕生は、実は苦肉の策だった。クラブの練習場の体育館は柏市にあり、Jリーグの柏レイソルの本拠地・日立台に隣接している。ただ柏市からはアリーナに関しての支援を得られず、最終的に渋谷区の協力を得て青山学院大学の体育館を本拠地とすることになった。
それまで企業名の日立を冠していた実業団は、青山学院記念館という体育館をホームコートに、渋谷を代表するチームへ変わった。これはドラスティックな変化であり、昨年9月に開幕したBリーグのなかでも、最も変化が大きかったチームかもしれない。
「青学の体育館は作られてから50年以上たって、大学関係者でも色々調べてみないとわからないことがでてきました。たとえば体育館の耐荷重はどれくらいなのかを調べようとしても、資料を見つけるのは簡単ではなくて……」
そう語るのは、ゲームオペレーションを担当している岡田絵梨子だ。サンロッカーズの場合では、普段は学生が使っている青学の体育館を、試合の日に合わせてBリーグ用に準備し、演出を考えつつも事故なく試合を運営することが求められる。
渋谷区だけでなく港区の消防署、警察署とも協議。
岡田は高校時代に漫画『スラムダンク』とNBAにハマって渡米を決意。スポーツマネージメントを学び、NBAの下部リーグのインターンなども経験して日本で過去に3チームで働き、開幕前にサンロッカーズに来ることを決めた。
昨シーズンの試合を見て、Bリーグで最もやんちゃで機動力のあるマスコットのサンディーに衝撃を受け、チームに関わる人たちがバスケについて熱く語るところに惹かれたのが大きな理由だった。
7月に着任した岡田は、そこから目が回るような生活を送ることになった。50年以上も前に建てられた体育館の設計会社と構造を確認することもあった。体育館は渋谷区にあるのだが、体育館脇の小さな道のむこう側は港区。渋谷区だけではなく、港区の消防署や警察署とも協議した。
昨年10月1日に行なわれた富山グラウジーズ戦がホーム初戦だったが、文字通り開始直前まで準備に追われて、感慨にふける間もなく1日を終えた。帰宅してもビールで乾杯、などとはいかず、倒れ込むように眠りに落ちた。