“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
U-20ベネズエラの恐るべき目つき。
日本サッカーは「まだまだ甘い」。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by7044/AFLO
posted2017/06/05 07:00
7月の試合で退任予定の内山監督は、ベネズエラ戦を「死闘だった」と表現。「選手たちを誇りに思います」とコメントした。
市丸「日本はまだまだ甘いんかなと思います」
「日本が世界で戦うには、『的確な判断の共有』と『勝者のメンタリティー』が必要なんです。そのバランスと、ピッチ上で精度の高いままプレーとして表現できるかが課題となる。それに尽きる。僕らはそれを2年半、選手たちに言い続けてきて、彼らはしっかりと受け止めてくれた。でもまだ、もう一歩足りなかった」
帰国後の囲み取材において内山監督はこう語っていたが、まさにその「的確な判断の共有」と「勝者のメンタリティー」を一番発揮すべきなのは、疲労という名の魔の手がピークに差し掛かった時なのだ。
この一瞬のプレーで見せてしまった隙と、それを見逃さなかった戦術眼こそ、僅かに見えてとてつもなく大きな日本とベネズエラの差の正体だった。
「相手は日本がチャンスになりそうなときにファールで止めてきたりと、そう言うクレバーさがあったし、それが最後まで続いた。日本はまだまだ甘いんかなと思います」(市丸)
どうやったらこの差を埋められるのか――。徹底したフィジカル強化、常に高いインテンシティの中でのトレーニングや試合の連続が当然必要だ。強度の高いプレーを連続して求められる環境が日常化すれば、疲労が蓄積した時における頭脳的なプレーや、その精度の向上にもつながるかもしれない。
しかし、それだけでは埋められないことがあるという事実も、最後に言及しておく。
世界のサッカーシーンにおいて、20歳という年齢は「より自分を高く売る」ためのラストチャンスなのだ、という共通認識だ。
同世代なのに日本人選手とは完全に異なる「目つき」。
20代前半ならば、今後もチャンスに恵まれる機会はあるだろう。しかし世界レベルにおいて、より大きな野望を持ち、より高いレベルでのプレーを現実のものとするためには、目の前の敵、そしてチームメイトすらをも押しのけようとする圧倒的な自己主張が必要なのだ。
実際、U-20W杯の現場で間近に見たウルグアイやベネズエラの選手にはそれがあった。現場にいなくとも、テレビを通して試合中の彼らの目を見れば良く分かったのではないだろうか。
鋭い眼光でピッチに立ち、自らが輝くチャンスを虎視眈々と狙い、その瞬間を見逃さずに、全身全霊を尽くす――。そんな彼らのプレーには強烈な自己主張と、尋常ではない覚悟が感じられた。