サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
韓国で浴びた、名誉のブーイング。
U-20日本とイタリアの価値ある40分。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byAFLO
posted2017/05/29 17:00
密集地帯にドリブルで飛び込み、3人の合間を縫ってゴールまで持ち込んだ堂安律の2点目は想像を絶するものだった。
狙い通りだった1点目、個人技で奪った2点目。
しかし、スコアは0-2のままだった。ファビッリは足を滑らせ、追加点は生まれなかった。それだけでなく、22分に堂安律が追撃のゴールを奪った。前半のうちに1点差へ詰め寄ったことで、選手たちはグループ突破へのハードルを下げることができていたのである。
もっとも、1-2では勝点1を積み上げられない。ベスト16進出の可能性を高めるには、あと1ゴールが必要だ。
ここで再び輝いたのが堂安である。
右サイドからゴール前へ飛び込んでの1点目は、スカウティングに基づいたものだった。「イタリアは高さがあるけれど、サイドから入っていけば必ずギャップをつける」という攻撃のパターンを、内山篤監督は選手たちに授けていた。
チームとしての狙いが表れた1点目に対して、50分の2点目はハイクラスな個人技の結実だ。ペナルティエリアへドリブルで、それもスラロームではなく直滑降のように高速で突き進みながら、背番号7を着けたレフティーはボールを失わない。力強くはないものの確実に自らの意思を伝えたボールは、甘い余韻を漂わせるかのようにゆっくりとゴールの中へ転がっていった。
無難なプレーが続く40分に、この試合の価値がある。
ここから先の40分間に、この試合の価値がある。
得失点差で上回るイタリアは、失点のリスクを徹底して削ぎ落してきた。マイボールになってもオーガナイズを崩さずに、無難なプレーでやり過ごしていく。
ボールを持たされることの多くなった日本も、前がかりになることはない。そうかといって、守備に重心が傾いてしまうこともないのだ。
日本もイタリアも攻撃の意欲を胸中に押し止める展開は、当然のことながら動きに欠ける。残り時間が5分となったあたりから、スタンドのざわめきはブーイングへ変わっていった。どちらのチームも観衆に見せ場を提供することなく、2-2のままでゲームは終了した。