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韓国で浴びた、名誉のブーイング。
U-20日本とイタリアの価値ある40分。

posted2017/05/29 17:00

 
韓国で浴びた、名誉のブーイング。U-20日本とイタリアの価値ある40分。<Number Web> photograph by AFLO

密集地帯にドリブルで飛び込み、3人の合間を縫ってゴールまで持ち込んだ堂安律の2点目は想像を絶するものだった。

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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AFLO

 いつもなら耳障りに感じるブーイングが、この日ばかりは気にならなかった。

 U-17やU-20の代表チームは、育成年代と言われる。フル代表へつながる選手をどれだけ生み出せるかに、主眼が置かれている。

 ならば、結果は問われなくてもいいのか?

 否、そうではないだろう。

 5月27日にイタリアと対峙したグループステージ第3節は、内山篤監督が率いるチームのナイーブさが浮き彫りになる。キックオフからわずか3分の失点は、ここまで行われた今大会の24試合で2番目に早い。

 これが1試合目ならば、エクスキューズを見つけることはできる。たとえば、昨夏のリオ五輪の初戦で、U-23日本代表はナイジェリア相手に6分、10分と失点を重ねた。日本も9分と13分にゴールを奪ったが、撃ち合いを望んでいたわけではない。初戦特有の緊張感が選手たちの身体を縛りつけ、予期せぬゲーム展開を招いたのだった。

日本の命運は、風前の灯だった。

 しかし、U-20日本代表のイタリア戦は違う。すでに2試合を消化しており、大会の雰囲気には馴染んでいる。対戦相手の最新のデータが、手元に揃っている。南アフリカとの第1戦で、開始7分に先制された教訓も生々しい。20歳以下のチームだとしても、ゲームの入りかたは批判を免れない。

 ゲームの分かれ目は15分にあった。最終ラインからボールを持ち出した中山雄太の縦パスがカットされ、このセンターバックが埋めているはずのスペースへ縦パスを通される。イタリアの2トップを担うアンドレア・ファビッリが、フリーでペナルティエリア内へ侵入してくる。

 ここで3点目を失っていたら、日本の命運は尽きていたはずである。イタリアに敗れて勝点3でグループステージを終えたら、成績上位の3位に食い込むハードルが上がる。得失点差のマイナスがさらに大きくなってしまう状況も考えると、選手たちの心に絶望感が入り込んでくるのは容易に想像できた。

 堅守の遺伝子を持つイタリアを相手に、0-3から同点へ持ち込むのは不可能に近いミッションだからだ。

【次ページ】 狙い通りだった1点目、個人技で奪った2点目。

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堂安律
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