プレミアリーグの時間BACK NUMBER
「地球の3割は彼がカバーしている」
チェルシー・カンテの異常な貢献度。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2017/05/05 09:00
ボール回収力に攻撃力が加わったカンテ。イビチャ・オシムならば2010年代最強の「水を運ぶ人」としての評価を与えるかもしれない。
チームメートからは「ネズミ」「タコ」。
敵のクリアボールをコントロールし損ねたカンテは、そのままゴールラインを割ると思われたボールに自分で追い付くと、一緒に追って来た相手DFをかわしてからゴール正面で待つエデン・アザールへと完璧なパスを折り返した。得点にこそ至らなかったが、記者席からも「おおっ」と感嘆の声が上がり、ソーシャルメディアでは「カンテならではの自分から自分へのパス」として話題にも上った。
ウェストハム戦に限らず、今季リーグ戦での走行距離はチーム最高を記録。タックルとインターセプト数は最終ラインの面々を超えている。あだ名をつけるのが好きなアザールに「ピッチのどこにでもチョロチョロ現れるネズミみたいだ」と言われ、アザールが「タコ」と呼ぶネマニャ・マティッチも「自分みたいに長い足のリーチはないけど、ボールを奪い取れるから彼もタコだ!」と説明している。
ウェストハム戦ではカウンター以外の局面でも敵陣内まで上がっていった。マティッチより攻撃的なセスク・ファブレガスと3-4-3の中央でコンビを組んだが、セスクより前にいることも多かった。
成功率は82%→89%、前方へのパスも増えた。
またチェルシーでは、レスターに比べると高いボール支配率が要求される。中盤センター右側にいるカンテには、右サイドにそれぞれ配置されるDFセサル・アスピリクエタ、ウイングバックのビクター・モーゼス、FWペドロ・ロドリゲスと連係し、ビルドアップでボールを前方に運ぶ仕事も求められる。
そこで、昨季以上に目に留まるのがカンテのパス。リーグ戦での総本数は執筆時点で、既に昨季終了時の1449本を超え、成功率も約82%から89%へと上昇している。ウェストハム戦でも計55本を通し、90%の成功率を誇った。試合後の指揮官は「失敗したパスが5本。これは改善の余地がある!」と冗談を言って報道陣を笑わせたが、同時に「横パスではなく前方に届けるパスが増えている」と真面目な評価も口にしていた。