プレミアリーグの時間BACK NUMBER
「地球の3割は彼がカバーしている」
チェルシー・カンテの異常な貢献度。
posted2017/05/05 09:00
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Getty Images
「1人でマケレレ、キーン、ビエラの3人分」
4月25日に行われたチェルシーvs.サウサンプトン、『スカイスポーツ』で解説したジェイミー・レドナップによるエンゴロ・カンテ評だ。
チェルシーの今季新戦力がPFA(プロ選手協会)年間最優秀選手賞に輝いた翌日だったとはいえ、やや褒めすぎの感はある。クロード・マケレレと言えば、レアル・マドリーとチェルシーで活躍し、中盤の地味な守備役にスポットライトを当てた男だ。ロイ・キーンは、黄金期のマンチェスター・ユナイテッドでリーダーシップを発揮した猛者。アーセナルで主将を務めたパトリック・ビエラは攻守にダイナミックで、最近よく表現される“ボックス・トゥ・ボックス”型センターハーフの元祖だった。
もっとも、レドナップの気持ちは理解できる。カンテは昨季レスターでカウンターの起点役となり、年間最優秀選手に選ばれていても不思議ではなかった。ただ26歳のボランチがプレミア2年目に同賞を手にした理由は、ボールハンター以上の能力をチェルシーで発揮したことにあるのだ。
コンテいわく「あらゆる要素を持ち合わせたMF」。
監督のアントニオ・コンテに言わせれば「あらゆる要素を持ち合わせたMF」。現役時代コンテは、ピッチの広範囲をカバーしながらチームを鼓舞し、攻撃センスもある選手だっただけに説得力がある。
そのコンテが会見で「何かカンテに注文は?」と訊かれ、「監督として尻を叩く理由を見つけなければ」と言って苦笑したのは、3月のウェストハム戦後のことだった。
この試合は「今季のカンテ」の魅力が集約された一戦で、44分過ぎの一場面は特に印象的だった。