プレミアリーグの時間BACK NUMBER
「地球の3割は彼がカバーしている」
チェルシー・カンテの異常な貢献度。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2017/05/05 09:00
ボール回収力に攻撃力が加わったカンテ。イビチャ・オシムならば2010年代最強の「水を運ぶ人」としての評価を与えるかもしれない。
ダビド・ルイスの守備範囲すらもカバーする。
チームとして自分たちのサッカーを封じられた4月半ばのマンチェスター・ユナイテッド戦(0-2)でも、カンテはピッチ上の誰よりも頻繁にタックルとインターセプトを繰り返し、放ったパスの9割を味方に届けていた。
もちろん完封負けした一戦だけに、実質的な貢献度が高かったとは言えない。スピードのあるマーカス・ラッシュフォードに先制ゴールを許した場面では、手前に盾がいなかったダビド・ルイスが簡単に抜き去られ、3バック中央の弱点が露呈された。
だがこれはダビド・ルイスが日頃、カンテの援護を受けている証拠とも取れる。ダビド・ルイスはかつてメディアで「DFではない」とまで言われたが、今季は「堅守を見せている」と褒められるようになったほどなのだ。
動きを止めない「サイレント・リーダー」。
カンテの守備範囲の広さは、ツイッター上で「地球の7割は水、残る3割はカンテにカバーされている」というジョークが回るほど。昨夏のルイス再獲得時に囁かれた「ルイスの存在までカバーできるか?」という冗談半分の疑問には、当のカンテがピッチ上で「できる」という回答を出していたわけだ。攻守に期待以上の働きを見せているカンテは、レスターからチェルシーへの移籍で、逆にインパクトを増していると言ってもよい。
だからこそ、チェルシーの指揮官からは「サイレント・リーダー」という褒め言葉さえ頂戴しているのだろう。カンテは、ピッチ上で動きが止まることのない足でチームを鼓舞しながら牽引できる。
前述のサウサンプトン戦にしてもそうだ。先制ゴールを決めたアザール、2ゴール1アシストの主砲ジエゴ・コスタが脚光を浴びたが、1-1の同点とされた数分後、ドリブルで勢いよく右サイドを上がってCKを奪うなど、敵に傾きかけた流れを再び引き寄せたのはカンテだった。