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大家友和が41歳で告げられた解雇。
ナックルボーラーはどこへ行くか。 

text by

ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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photograph byAFLO

posted2017/04/18 07:00

大家友和が41歳で告げられた解雇。ナックルボーラーはどこへ行くか。<Number Web> photograph by AFLO

大家友和がナックルボールを投げるようになって4年目。本人は今が成長期だと感じているのだが……。

独立リーグで若い選手と過ごした経験が生きている。

 その中にはニューヨーク州北部出身で、子供の頃に車で数時間のカナダのモントリオールにメジャーリーグの試合を家族で見に行った際、当時エクスポズ(現ワシントン・ナショナルズ)の主戦投手だった大家の登板を見たという若い選手もいる。彼はこう話してくれた。

「メジャーリーグで10年近く現役をやるなんて、今の僕には想像もできないことだよ。それだけで充分に彼が素晴らしい野球人生を送ったと分かるし、ここで彼と知り合って、いろいろと話したことは、僕にとっては忘れられない思い出になる」

 大家がマイナーリーグの若い選手たちに、自分の技術や経験を伝える。それはとても自然なことのように思えた。彼には日本プロ野球でのコーチ経験こそないが、ホワイトソックスやインディアンスのマイナーにいた頃から若手選手に質問される機会が多かったし、独立BCリーグの富山や福島では投手コーチの相談役のような立場で若い投手たちの成長を手助けしている。

相手の年齢や精神状態によって、教えることは変わる。

 そしてそれは、彼が10年以上前に立ち上げた少年野球の草津パンサーズや、社会人クラブチームのOBC高島が「原点」となっているような気がする。

「教える相手の技量によって、こちらが教えることも当然変わってきますけど、技術だけじゃなく、彼らのやる気だとか、モチベーションの与え方というのも、相手によって変わってくる。

 シニア(少年野球)の子たちと社会人の子たちじゃ、年齢は大きく違うけど、じゃあ、社会人の子たちが必ずしも大人なのかって言うと、まだまだ子供の部分もあるわけで。それは日本のプロ野球にドラフトされた若い子たちにしたって、そう変わらない。若い子のやる気やモチベーションを上げるのって、周りが考えているより難しいし、そういう時こそ、指導する側の技術や経験が生きてくると思う」

 決して他の野球選手にはできない経験をしながら、その度に心の在り方を変えながら1人の野球選手、1人の人間として成長してきたのが大家だ。彼のように豊潤な知識と経験を持つ人材は「何か新しいことを始めたい」、「保守的な球団を出し抜きたい」と考える進歩的な球団にとっては大きなプラスになりそうだが、それはまた、別の話だ。

【次ページ】 1回の失投で、「もう終わった」と覚悟を決めた。

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