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大家友和が41歳で告げられた解雇。
ナックルボーラーはどこへ行くか。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byAFLO
posted2017/04/18 07:00
大家友和がナックルボールを投げるようになって4年目。本人は今が成長期だと感じているのだが……。
コーチも捕手も、ナックルのことがよくわからない。
「誰もナックルボールのことは分からない。投げたこともなければ、受けたこともない球なんで、分からなくて当然なんです。ブルペンで受けてくれた捕手なんかは『今日は良かったよ』とか声かけてくれるけど、勇気づけようとしてくれていたのかも知れないし、コーチなんかは『回転してなきゃいい』、『派手なアクション(動き)があればいい』みたいな感じだった」
キャンプ初日こそ「珍しがられていた部分もあったと思う」。ところが「自分にはどうにもならない」と気づくと、コーチたちの反応が疎遠になっていく。
例えば他の投手たちと横並びになって投球練習を始める。コーチが見守る。アドバイスを送る。試しに投げてみる。手応えを感じる。そういうマイナーの日常的な風景の中に大家はいなかった。
教えようがないのだから見守ることもできない。アドバイスを送ろうにも、ありきたりなことしか言えない。意図的にではなかったにせよ、彼はやがてコーチ陣から置き去りにされた。
オープン戦の好投でコーチの態度が変化。
そういった状況に変化が見られたのは、彼がマイナーリーグのオープン戦で結果を残し始めたからだ。
「今思えば、ですけど、2試合目でまあまあ投げられたのが、ここまで生き残れる上では大きかったのかも知れない」
3月15日のマイナーのオープン戦の初戦で1回1失点だった彼は、オリオールズのダン・デュケットGMが観戦した第2戦で2回を無失点に抑えた。するとコーチたちが何人か、大家の投球練習を見守り、以前よりも話しかけてくるようになった。
大家とマイナーリーグの出場選手枠を争っていた他の投手たちは、実は活躍の前後で変化しなかった。と言うより、彼らは最初から41歳になる元メジャーリーガーに興味を持っていた。「ナックルボーラー」の大家ではなく、メジャーで9年以上のキャリアがある「普通の投手」トモ・オオカに。