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大家友和が41歳で告げられた解雇。
ナックルボーラーはどこへ行くか。
posted2017/04/18 07:00
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
AFLO
ボルティモア・オリオールズとマイナー契約していた大家友和が、「クビになりました」とテキストを送ってきたのは、マイナーリーグのキャンプも終盤の3月28日のことだった。その夜、オリオールズのマイナー選手の宿舎となっている安ホテルのロビーで、大家はこう言った。
「今日、言われることについては何の前触れもなかったですけどね」
人生の節目となるはずの出来事が起こったばかりだというのに、彼はいつもと変わらぬ淡々とした口調で言葉を続けた。
「クビになること自体に驚きはなかった。まぁ自分で言うのも変ですけど、ここまでクビにならなかったことの方が驚きと言えば驚きだったし、本当にどれぐらいチャンスがあったのかは、僕には分かりません」
大家はマイナーリーグのオープン戦4試合に登板して8回4失点だった。彼が契約を解除されたことに驚かなかった理由は、オリオールズのマイナーリーグ・キャンプに参加した投手の数が「いくらなんでも、多すぎた」からだった。
「ナックルボーラーって、孤独だなぁ」
アメリカのプロ野球の真実。スプリング・トレーニング(キャンプ)は、単にシーズン開幕のための調整の場所ではない。開幕メジャーを約束された実績ある選手の陰で、メジャーリーグでは開幕メジャーの25人に生き残るための戦いがあり、マイナーそれぞれの階級では、開幕マイナーの25人に生き残るための戦いがある。大家はオリオールズのマイナー施設にいた選手たちを数えて、今まで彼が経験したこともない多さに驚き、自分がその戦いにさえ入っていないのではないかという疑念を抱いていた。
「ナックルボーラーって、孤独だなぁと思いましたよね」
口元で笑ったものの、その表情はとても真面目だった。