フランス・フットボール通信BACK NUMBER
クライフを変えたダウン症の若者。
その精神は、今も世界中で生き続ける。
text by
ティエリー・マルシャンThierry Marchand
photograph byDR
posted2017/04/13 17:00
スペイン・マルトレルに完成した「クライフ・コート」の全景。単なるスポーツ施設を超え、「ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)」としても機能することを目指している。
ストリートサッカーにこそ、創造性の根源がある。
クライフは、ストリートサッカーにこそ創造性の根源があると考えていた。
ピッチの現実もそこにあると。
家に通じる階段や歩道は、彼にとっては敵の脚でありタックルだった。同時にそれは、ワンツーリターンを返してくれる味方の脚でもあった。そうした障害物だらけの歩道の上で、クライフは独自のヴィジョンを生み出し、他人が思いもよらないスペースやプレーの領域を作り出すことを学んだのだった。
ストリートにはすべてがある。
同時にストリートは精神的な避難所でもあり、(欲求不満の)社会的なはけ口でもあった。
「どんな組織――それが公共(自治体)であろうと民間(クラブ)であろうと――が管理運営するにせよ、クライフコートは子供たちを管理・統制するために作られたのではありません」と、カロレ・タテはいう。
「そこを軸にしてコミュニティが固有の環境を作りだすためのものです。子供たちの身近にプレーできる場所がほとんどないことにヨハンは気づいていました。家は道路や駐車場、他の住居、高速道路などに囲まれて、空き地など見当たりません。だから私たちは、公共のプレーグラウンドを作ることにしたのです。そこが唯一の場所になるような」
世界中でクライフの思想が広がり続けている……。
クライフという存在は、地球規模のモニュメントである。彼のコンセプトは今日、全世界に広がっている。
クライフコートが集中するのはオランダ、イングランド、スペイン、アメリカの4か国だが、日本(金沢/本田圭佑クライフコート)はじめカナダ、南アフリカ、インド、マレーシア……世界のあらゆる場所に作られている。
オランダ、スペインのみならずスウェーデンやペルー、メキシコにも設立されているのが、マネジメントやマーケティング、コーチングなどサッカーの様々な側面を教えるヨハン・クライフ・インスティテュート。クライフコートもインスティチュートも、今後さらなる広がりを見せるだろう。