フランス・フットボール通信BACK NUMBER
クライフを変えたダウン症の若者。
その精神は、今も世界中で生き続ける。
text by
ティエリー・マルシャンThierry Marchand
photograph byDR
posted2017/04/13 17:00
スペイン・マルトレルに完成した「クライフ・コート」の全景。単なるスポーツ施設を超え、「ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)」としても機能することを目指している。
「ヨハン・クライフ・レガシー」という慈善組織。
コートはサッカーを楽しみたいすべての人々にオープンで、使用規則も助言的な意味あいしか持たない。
クライフが愛したのは自由や創造性であり、秩序だった無秩序である。
彼によればストリートサッカーこそが最高の学校であり、空き地や道端で何の規則も制約もなく、決め事なしにおこなわれるプレーこそが何よりも貴重なのだった。
「クライフコートを通して彼はそうした精神を広めたかったのです」
と、「ヨハン・クライフ・レガシー」のマネジャーであるカロレ・タテはいう。
「ヨハン・クライフ・レガシー」とは、クライフが生前に創設した基金や学院、クライフの名を冠したリセ(学校)やカレッジ、プライベートなアカデミー(クライフ・フットボール)、クライフコートなどを統括する慈善組織である。
トレードマークの背番号「14」に思想性をからめて発信。
クライフの普遍的なエッセンスは、彼のトレードマークでありまた伝説でもあった「背番号14」という数字を、ピッチの様々な要素に反映することで具現されている。
タテが説明する。
「グラウンドの大きさは縦が42m(「14」×3)で横が28m(「14」×2)です。ゴールは高さが1mで幅が4m(1と4)。オレンジのセンターサークルと青い鉄柵は、オランダのナショナルカラーと基金のロゴを表しています。
それぞれのクライフコート(世界21カ国に設置)には、クライフの“14の法則”という名の原則があります。『チームプレイ』『責任』『尊敬』『結びつき』『自発の心』『指導』『個性』『社会への関わり』『技術』『作戦』『発達』『学習』『協力』『創造力』です。
ただ、ヨハンは、彼の作ったピッチが無秩序状態であり続けることを望んでいました。
クライフコートにはセンターサークルを除いてタッチラインもゴールラインもない。柵もまたプレーの一部であり、創造的なプレーを生み出すための道具です。プレイヤーが自分ひとりで解決策を見いだすために、ボールは常に動き続けプレーの状態にある。彼が望んだのは、子供たちが自分自身で固有のルールを作りだすことであり、お互い同士ですべてをおこなうことでした」