オフサイド・トリップBACK NUMBER
ベンゲルより、アーセナルが限界?
退任したら高確率でマンUの二の舞か。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byAFLO
posted2017/03/13 07:00
「どんなよいことにも、終わりがある ベンゲルよさらば」と書かれたプラカード。カリスマへの愛憎が溢れている。
マンUが辿った地獄の苦しみを、アーセナルも?
しかし、クラブの運営体制が安定しているとしても、監督交代が裏目に出ないとは限らない。ベンゲルが持つ求心力の大きさを踏まえれば、むしろかなりの動揺と悪影響が及ぶと考える方が自然だ。
監督交代と同時に、チームが下降線をたどる例は枚挙にいとまがない。最も象徴的なのは、ファーガソンが勇退した後のユナイテッドである。
そもそもファーガソンは、ベンゲル以上に長期間クラブに君臨した人物だったし、自らの去就が与える影響も熟知していた。だからこそ、自分抜きでもクラブがしっかり機能するという確信を得られるまで、身を引こうとしなかった。
しかし、何が起きたかはご存知の通り。自ら後任に選んだモイーズは期待外れに終わり、ファンハールも迷走。モウリーニョとイブラヒモビッチを迎えた今シーズンでさえ、赤い悪魔は完全復活に苦しんでいる。
最大のカリスマを失ったアーセナルが、ユナイテッドと同じ道をたどらないと断言できる人は、はたしてどれほどいるのか。
たしかに現場でチームを指揮するという役職に限れば、後任候補はいくらでも見つかるだろう。またベルカンプやビエラが順当にアーセナルで指導者の道を歩んでいれば、状況はだいぶ違っていた。チームのOBをクラブに残し、後継者を育ててこなかったのは、ベンゲル体制における最大の失敗だと言っていい。
いずれにしても、精神的な支柱としてクラブ全体の運営を安定させられる人物は、今のところベンゲル監督以外に見当たらない。
ベンゲル監督は、成績不振の責任を取ろうとせず監督の座にしがみついていると論評されることが多い。しかし無責任どころか、自分に課せられた責任の重さを誰よりも強く痛感していればこそ、身を引きたくとも引けない状況に置かれているというのが、実情に近いのではないだろうか。
では、もしベンゲルが辞めたらどうなるか。
ベンゲル監督は、続投するのか勇退するのか。
現地では、CL出場権を確保できるかどうかが、鍵を握ると噂されているが、これもまだ観測レベルの話だ。
ただし、仮に監督を辞めることになった場合、ベンゲルとクラブがたどる未来をシミュレートすることはそれほど難しい作業ではない。
まずは、誰を監督にするかが運命の分かれ道になる。
巷では様々な名前が挙がっているが、願望だけを言えば、デニス・ベルカンプやビエラ、オーフェルマルスといったOB連中がコーチングチームを組むようなシナリオが楽しい。グランパスつながりでストイコビッチが大抜擢されたりすれば、今度はロンドンで納豆の話ができる。