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ベンゲルより、アーセナルが限界?
退任したら高確率でマンUの二の舞か。
posted2017/03/13 07:00
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph by
AFLO
ファーストレグは0-4で完敗。セカンドレグではロスタイムに立て続けにゴールを奪い、6-1で奇跡の逆転劇を演じる。
先日行われたCLのバルサ対PSG戦は、「何が起きるかわからない」というサッカーの魅力を体現する試合になった。
だが、ここまで劇的なドラマは滅多に成立しない。むしろ予想どおりに事が運び、現実の厳しさを思い知らされるケースがほとんどだ。
バルサ戦の前日に行われたアーセナル対バイエルン戦は典型例だろう。アーセナルは、アウェーで行われたファーストレグで1-5と惨敗。セカンドレグで巻き返すどころか再び1-5で大敗し、早々と檜舞台から姿を消している。
かくして、さらにボリュームを増したのが「ベンゲル限界論」だ。2003-04シーズンに無敗優勝を成し遂げた際には、体力の続く限りチームを率いて欲しいとラブコールを送ったはずのサポーターが、「Enough is Enough(もうたくさんだ)」と叫ぶようになった。
ベンゲル限界論が説かれるのは、目新しい出来事ではない。近年ではシーズン終盤の恒例行事になった感もある。主な理由は、プレミアで無冠状態が続いていること、CLでも決勝トーナメント1回戦で敗退し続けていること、そして潤沢な予算がありながら、選手補強がうまくいっていないことだ。
限界論が説かれる背景には、過去の輝かしい記憶が裏目に出ている側面もある。1990年代後半から2000年代中盤までのアーセナルは、マンチェスター・ユナイテッドと共にプレミアの2強に君臨し、無敗優勝まで達成した。常勝軍団という自負があるだけに、なおさら舌鋒は鋭さを増す。
実は平均順位では3位、安定感なら2番手。
しかし、この種の議論にはどうしても違和感を覚えてしまう。
そもそもベンゲル監督が赴任するまでのアーセナルは、1930年代に黄金時代を築いたものの、低空飛行の時期が圧倒的に長いチームだった。常勝軍団のイメージは、名古屋グランパスからやってきたフランス人監督が作り上げたものに他ならない。
近年の成績に対する評価も、やはり今ひとつしっくりこない。アーセナルはそれほど低迷しているのだろうか?
まずプレミアに関していえば、無敗優勝を成し遂げた次の年、2004-05シーズンから、昨シーズンまでの平均順位は3.3位。ユナイテッド(2.5位)とチェルシー(2.9位)に続いて、安定した成績を収めている。
直近の5シーズンに限っても、平均順位は3.2位。この間にはユナイテッドとチェルシーの順位が乱高下したため、成績の安定感ではマンチェスター・シティ(2位)に次いで2番手に浮上する。結果、アーセナルはプレミアで最もコンスタントにCLに名を連ねるチームとなった。