話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
「浦和が優勝できない理由」を潰す。
遠藤航が始めた、チーム改造計画。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/02/16 17:00
ユーティリティは武器だが、遠藤航の中で「本職」は今でもボランチ。スタメン2人の壁は高いが、あえてそこに波風を立てにいく。
代表や海外移籍を見据えるなら、ボランチしかない。
遠藤のように体が強く、ボールを奪い取る力のある選手はACLや強豪チームとの試合向きである。守備的なポテンシャルの高さは、ハリルホジッチ監督も認めるほどだ。キャンプ地が同じ沖縄だったコンサドーレ札幌の稲本潤一も「遠藤はセンターバックの真ん中の選手じゃないよね。たぶん、本人はセンターバックで物足りなさを感じていると思う。レッズにあそこをやれる選手がいないからそうなっているだけで、彼の守備の強さや縦パスとか攻撃の能力を考えたらボランチでしょ」と評していた。
「別にセンターバックをやりたくないわけじゃない。センターバックかぁっていう気持ちでやるのもよくないんで、任された以上は割り切ってやります。それにうちは攻撃的サッカ―だからこそ、後ろがしっかり守れるかどうかっていうのが大事になってくる。そこの質を高めたい気持ちはすごくあります。
でも、個人的にはボランチでやりたい。それはミシャにも言いました。やっぱりもっと成長したいし、プレーの幅を広げたい。リオ五輪はボランチでプレーしたし、日本代表にもボランチとして選ばれた。これからも日本代表でプレーしたいし、W杯にも出たい。いずれは海外でプレーしたい気持ちもある。
そのためには両方のポジションができた方がいいけど、現実的には自分は海外の大きくて強いセンターバックのようなタイプではないので、難しいじゃないですか。自分の良さを磨いて海外にいくには、やっぱりボランチだなと思っているので」
3バックとダブルボランチには、ほとんど競争がない。
自己の成長と夢は、プロ選手にとって絶対に必要なものだ。だが、遠藤がボランチを希求するのはそれだけではなく、チームに競争をもたらすという意味合いも大きいように見えた。
攻撃陣では苛酷なサバイバルが繰り広げられているが、守備陣は槙野智章、遠藤、森脇良太の3バック、阿部と柏木のダブルボランチに競争はほとんど存在しない。連係が深まって阿吽の呼吸でプレーできるメリットはあるが、競争がなくなれば慣れや甘えが出て、プレーに対する厳しさが失われることもある。