福西崇史の「考えるサッカー」BACK NUMBER
「本気のレアル」を体感した鹿島。
クラブW杯決勝、福西崇史が見た本質。
text by
福西崇史Takashi Fukunishi
photograph byNanae Suzuki
posted2016/12/20 17:30
柴崎岳が叩き込んだ鮮烈な2ゴール。これによってレアルが“本性”を現したのは疑いようのない事実である。
柴崎の2得点で「本気のレアル」を引っ張り出した。
そして鹿島が2-1として以降、レアルが明らかにギアを上げて、もっと攻撃的に仕掛けるという意思をチーム全体で見せてきた。それは鹿島としてみれば、「本気のレアル」を引っ張り出すことに成功したと言えますよね。
本気になったレアルの波状攻撃に対して、鹿島はラインを押し下げられながらも最終ラインや中盤が守備ブロックを作って、何とか我慢していたと思います。
それでもレアルは、想像を超えた個人能力で打開してきた。例えば中盤のモドリッチは、身体の使い方や緩急、冷静な状況判断でマークをはがしてチャンスを作ってきました。守備をしている時に“これなら止められる”と思ってボールを奪いに行ったのに、イメージ通りにいかないのは肉体的にもメンタル的にも苦しくなる。
さすがの鹿島でも、こうやって守備に追われたことで疲れを感じていたと思います。例えば大会通じて素晴らしいプレーだった昌子は、ロナウドやベンゼマに対応しつつ、最終ラインを上げ下げし続けていた。粘り強くディフェンスしてもセカンドボールを相手に拾われて……となると、時間が経つにつれて相当厳しく感じていたと思います。
現役当時に「銀河系軍団」と戦えていれば……。
でも負けてしまったとはいえ、ピッチ内でレアルとの差を味わえたことが、本当に大事なんですよね。
自分の現役時代の話ですが、ジュビロは'99年にアジアクラブ選手権(現在のアジアチャンピオンズリーグの前身)、そしてアジアスーパー杯を優勝して、世界クラブ選手権の出場権を獲得した。その大会ではレアルと対戦することが決まっていたのですが、大会が中止となってしまいました。
当時のレアルはジダンが現役で、他にもラウール、フィーゴ、ロベルト・カルロス、グティ……いわゆる「銀河系軍団」だったので、当時世界最強と言われたチームと公式戦で戦えなかった悔しさは今でもあります。
自分は日本代表だったので、代表戦でそういった選手たちと戦う機会にも恵まれましたけど“普段からトレーニングしている”クラブだと、彼らのプレーの質がさらに上がってくるんだろうな、とイメージしていましたからね。
当時のレアルで言えば、ジダンは周囲を生かしながら、自分で行くべきところは仕掛けてくる。それに対して自分たちはどう対応していけばいいのか。それを肌で感じていくことが、貴重な経験値になる。