Jをめぐる冒険BACK NUMBER
レアル相手に「2位も最下位も一緒」。
あの30分が、鹿島をさらに強くする。
posted2016/12/19 15:30
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Takuya Sugiyama
レアル・マドリーが土俵際まで追い込まれていた。公式戦36試合無敗中のヨーロッパチャンピオンが怒涛のアタックを浴び、たじたじになっていた。
「白い巨人」を追い詰めていたのは、南米チャンピオンでも、北中米チャンピオンでもなく、開催国枠として出場し、3試合を勝ち抜いてきた鹿島アントラーズだった。
12月18日に行われたクラブの世界一を決めるクラブワールドカップの決勝は、カリム・ベンゼマのゴールでレアル・マドリーが先制し、柴崎岳の2ゴールで鹿島が逆転したものの、クリスティアーノ・ロナウドのPKが決まり、2-2のタイスコアで後半終盤に突入した。
43分にファブリシオのミドルシュートがレアル・マドリーゴールを強襲すると、44分にはスルーパスを引き出した金崎夢生がクロスを入れたが、カゼミーロによってCKに逃げられた。
レアル・マドリーがクリアしようにも、永木亮太がセカンドボールを回収し、二次攻撃、三次攻撃へとつなげていく。45分にはカウンターから抜け出そうとした金崎の突破をセルヒオ・ラモスがファウルで阻んだが、提示されかけた2枚目のイエローカードはなぜか、レフェリーの胸ポケットに仕舞い込まれたまま。49分にはゴール右横でクロスを受けた遠藤康が右足を強振したが、ボールはゴールの枠から逸れてしまった。
レアルもだが、鹿島も厳しい日程を越えてきた。
12月10日にリーグ戦を終えて12日の早朝に来日し、15日にクラブ・アメリカとの準決勝を戦ったレアル・マドリーが万全の状態ではなかった、などと野暮なことは言う必要はないだろう。
長距離移動を強いられるクラブワールドカップが難しい大会だと言うことは、前身のトヨタカップの時代から彼らは経験済みで、だから、直前のリーグ戦にクリスティアーノ・ロナウド、ベンゼマ、モドリッチといった主力を温存し、この大会に備えている。
それを言うなら、鹿島も11月23日のJリーグチャンピオンシップ準決勝を皮切りに、29日と12月3日には浦和レッズとの決勝を戦い、休む暇なく今大会に参戦し、8日、11日、14日と連戦したうえ、11日と14日の開催地は大阪だったため、移動を余儀なくされている。