“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
元日本代表GKの父と週1で特訓――。
ヴィッセル内定・前川黛也の強み。
posted2016/12/22 11:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
偉大な選手の息子は、どうしても父親との比較と好奇の目にさらされることが多く、時にはそれが大きな重圧となり、常に“◯◯の息子”という形容がつく。
だが、それはある意味、避けて通れない運命であり、それを受け入れて、かつ偉大な背中を越えようとするバネが、選手としても、人間としても大きな成長を促すこともある。
関西大学のGK前川黛也(だいや)の姿を見ていると、それを非常に感じる。彼は191cmの高さを持ち、全日本大学選抜にも選ばれた大学サッカー界屈指のGKで、来季、ヴィッセル神戸への入団が内定している。
そんな彼の父親はサンフレッチェ広島で一時代を築き、日本代表として国際Aマッチ17試合出場を誇るGKだった前川和也である。
前川家の長男として生を受けた黛也は、自然とサッカーへの道を歩んで行ったが、始めた頃はGKとしてではなく、フィールドプレーヤーとしてであった。
フィールドプレーヤーだったが、身長が伸びて……。
父親と同じ大型GKとして、プロの道に進む。これだけを見れば、出来過ぎなほどの綺麗な“親子鷹”のように映る。しかし、ここに至るまでの道のりは、決して平坦ではなかった。特に前川黛也にとっては――。
彼は大分トリニータジュニア、サンフレッチェ広島ジュニア、サンフレッチェ広島ジュニアユースとエリート街道を歩んで来た。その時のポジションはFW、CB、サイドバックとフィールドプレーヤーで、GKはフットサルのときに少しやる程度だった。
そして彼の大きな転機がやってきた。中学2年時の彼の身長は160cm台であった。しかし、中3に入ると一気に身長が伸び、それは180cmにまで到達した。急激な体格の変化に、当然、骨や筋肉、プレー感覚がついていけるはずがなかった。
徐々にフィールドプレーヤーとして自分のプレーが出来なくなり、成長痛などから来る怪我も併発。サッカー選手として初めての大きな壁にぶつかった時、彼の目の前に現れたのは、GKとしてのサッカー人生だった。