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韓国で1強状態、クラブW杯も出場。
全北現代の監督に学ぶ組織掌握術。
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byYonhap/AFLO
posted2016/12/10 11:00
ACL決勝でUAEのアル・アインを破ってアジア王者となった全北現代モータース。チェ監督にとっては、2度目の戴冠となる。
重要な選手は、皆ベテランばかり!?
10年間のタイトルは、リーグ優勝4回、カップ戦1回、ACL2回。
日本の「最長不倒記録」を持つ西野が10年間で、リーグ優勝1回、カップ戦5回(スーパーカップ含む)、ACL1回優勝だから、チェは記録の上でこれを上回っている。
なぜ、ここまでの長期政権を保つことが出来るのか。
キーワードは“ベテラン好き”だ。
今回、大会に登場するチームを見ても明らかだ。守備ラインのレギュラーはGKが32歳、DFは31歳、32歳、32歳、29歳。また、チーム最大のスター選手イ・ドングは今年37歳になった。かつてFC東京でプレーしたブラジル人FWエドゥーも35歳だ。
チェ・ガンヒが来るまで普通のクラブだった全北現代。
'05年、チェ・ガンヒが赴任した当時の全北は、なんらカラーのない普通のクラブだった。
人口約60万の地方都市に誕生したこのクラブは、その地域に工場を持つ現代(ヒュンダイ)自動車を母体企業として'94年に誕生したが、国内優勝実績はなし。前任者の解任によって、フル代表コーチを離職していたチェに声がかかった。
リーグ戦では下位に低迷したものの、戦術を整備し直したチェは、いきなりカップ戦の優勝を勝ち取った。翌'06年、まだまだ韓国では認知度の低かったACLで優勝。この頃はまだ、若返りを図りつつ、試行錯誤を繰り返す時期だった。
クラブの本格的な飛躍は'09年に始まる。この年リーグで初優勝。以降、一度も3位以下に落ちたことがないのだ。
この年のシーズン前の選手獲得が、後の運命を決めた。
当時、全盛を誇った城南から「余剰戦力」として扱われた元代表FWイ・ドング(当時30歳)と同DFキム・サンシク(同33歳)をトレードの形式で獲得したのだ。自チームからは新人王候補になった若手らを送り出した。