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韓国で1強状態、クラブW杯も出場。
全北現代の監督に学ぶ組織掌握術。
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byYonhap/AFLO
posted2016/12/10 11:00
ACL決勝でUAEのアル・アインを破ってアジア王者となった全北現代モータース。チェ監督にとっては、2度目の戴冠となる。
下降線だったイ・ドンクを見事に復活させる。
イ・ドングは若くして大型FWとして頭角を現したが、'02年、'06年ワールドカップで最終エントリー漏れ。さらに移籍したプレミアリーグのミドルズブラでも挫折し、さらに国内復帰初年度の'08年には13試合出場2ゴールで終わる、というドン底にいた。
30歳に差し掛かったストライカーの移籍は完全に「都落ち」のイメージで見られた。いっぽうで実績のない全北とチェ・ガンヒにとって、ベテラン再生は限られたアクションの選択肢だった。
実際のところ、イ・ドングは全北加入後プレシーズンのトレーニングマッチ15試合で1ゴールも決められなかったという。それでもチェは「次の10試合でゴールを決めればいい」と励まし続け、見事再生させた。
イはその後、全北での10年間で126ゴールを記録。国内リーグ歴代最高ゴール数を有するFWとなり、現在も記録を更新中だ。この年から言われ始めた全北現代の“タッコンサッカー(ひたすら攻撃)”というスタイルの先鋒となっている。
ベテランを重用して、チームそのものが新しくなる!?
ちなみにイはこの間、'11年に中東クラブから推定年俸5億円の獲得オファーがあったことが報じられた。後に夫婦でテレビ出演した際に、この件が再び話題になった。共演した夫人は「オファーの総額は、ビルを丸ごと建てられるような金額だった」と口にした。一方のイは「監督が自分を見捨てるのはいいが、自分は監督を見捨てられなかった」と言い切り、絶大なる信頼関係を視聴者に見せつけた。これを聞いた隣の夫人が「さすが私の旦那」とオノロケを見せる一幕も。
この他にもチェの“ベテラン好き”は続いている。
'14年には37歳のボランチであるキム・ナミルを獲得し、リーグ戦20試合で起用した。'15年4月には前年から続いたリーグ戦無敗記録が国内新記録の22戦にまで達した。この際もこんな発言をしている。
「外から見れば全北は『単にいい選手が揃ってるから負けない』と見るかもしれない。しかし私の考えは少し違う。安心できるベテラン選手が多いからこそ、新しい歴史を作ることができた」