“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
U-19が日本初アジア制覇に王手。
準決勝ベトナム戦で見た万全の組織力。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byAFLO
posted2016/10/28 12:00
グループリーグ初戦のイエメン戦でスタメン後、ベンチに回っていた岸本。決勝Tでの起用で、見事その厳しい役目を果たした。
終始試合を支配し続けることができたベトナム戦。
そのベトナム戦。立ち上がりからボールを支配した日本は、6分、今大会最大の武器になっているセットプレーから先制点を奪った。
右サイドでFKを得ると、市丸がゴール前に正確なボールを送り込む。これをファーサイドでCB板倉滉がヘッドで折り返し、FW岸本武流がバウンド際を上手く叩いて冷静にゴールに流し込んだ。
追加点は10分。今度はゴール前中央でFKを得ると、DF初瀬亮の放ったキックはGKに弾かれる。そのこぼれ球に反応したMF長沼洋一が中に折り返すと、FW中村駿太がダイレクトで蹴り込んで2-0と突き放した。
28分には、MF遠藤渓太のパスから始まった流れの中で岸本が倒されPKを獲得。初瀬のキックはGKにセーブされ、ゴールはならなかったが、これでベトナムに勢いづかせることなく、さらに攻勢を強めると、51分には中村が3点目を決めて勝負を決定付けた。
「無失点を崩したら、俺らのせいだよね」
岸本は初戦のイエメン戦でスタメン出場だった。だが、その試合で交代したFW岩崎悠人の活躍でスタメンを奪われる形となり、それ以降はベンチスタートに回っていた。
中村も第2戦のイラン戦でスタメン出場を果たしてはいたが、存在感を出し切れず、その後はベンチスタートになっていた。
「どんな状況でも、少ないチャンスでも決めきれるように、常に研ぎ澄まして準備をしたい」
途中交代で出場したタジキスタン戦後、中村はこうコメントしていた。
チャンスを掴みきれないでいた彼らが、ベトナム戦ではきっちりと結果を残してみせたのだ。
守備面でも、今大会一度も出番が無かった板倉、町田浩樹のCBコンビとGK廣末陸が、危なげない連係を見せた。
「ここまで無失点で来ているという、そっちのプレッシャーが強くて、マチ(町田)と『ここで(無失点を)崩したら、俺らのせいだよね』と話していた。でも最後まで集中力を維持することが出来た」と板倉が語れば、町田も「みんなが続けて来た無失点を途切らせたくない気持ちで戦った」と語る。