話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
曹監督に甘えた選手たちの依存心。
湘南、降格の陰に「いい練習」問題。
posted2016/10/25 07:00
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
試合終了の笛が鳴った瞬間、菊池大介はピッチに伏せ、石川俊輝は溢れる涙をユニフォームで何度も拭った。ロッカーでは曹貴裁監督が選手の前で男泣きした。
J1リーグ、セカンドステージ第15節、湘南ベルマーレは大宮アルディージャに3-2で敗れ、J2降格が決定したのである。
昨年は残留争い候補という下馬評を覆して年間総合8位と健闘し、「湘南スタイル」を定着させた。今シーズンはJ1残留はもちろん、順位をひとつでもふたつでも上にあげるのが目標だった。
しかし、現実は非常に厳しいスタートを強いられた。センターラインを担った遠藤航、永木亮太、秋元陽太ら主力選手が移籍するなど11名がチームを去った。新戦力も11名の選手を獲得したが、得点を計算できる外国人FWが取れず、軸となる菊地俊介がケガで長期離脱を余儀なくされた。新加入の選手が戦術を消化できず、チームは曹監督のサッカーを体現できずにいた。それでも曹監督は一切、言い訳をしなかった。
「今年のチームが良さを出せれば、J1の中で生き残っていけると信じていた」
チーム作りは時間がかかるものと割り切り、そのうち良くなることを信じて戦った。ファーストステージのラスト4試合は2勝2分で乗り切り、4勝4分9敗の16位。順位は低いが好転の兆しが見えたように思えた。
「いい練習ができている」という言葉の真実。
ところがセカンドステージ、湘南を待っていたのは悪夢のような連敗だった。3節の鳥栖戦に敗れてから15節の大宮戦まで、10連敗を含め1つも勝ち星を挙げられなかったのだ。
その間、敗れた試合について選手は反省を口にしていたが、同時にいろんな選手から同じ言葉が聞こえてきた。
「毎日、すごくいい練習ができているんですけど……」
最初は、その言葉について特に疑問を感じなかった。連敗中でもうつむくことなく、集中して練習できるということはポジティブな要素だと思っていた。
なぜなら湘南にとって日々の練習は、チームの生命線と言えるものだからだ。「試合は練習でできたものしか出ない」という曹監督の考えがベースにあるので、練習は質量ともにハード。戦術の確認と徹底を繰り返し、試合で心がける点を浸透させるなど練習メニューは豊富だ。移籍してきた選手は、まず湘南の練習に驚くと言われているほどだ。