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曹監督に甘えた選手たちの依存心。
湘南、降格の陰に「いい練習」問題。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2016/10/25 07:00
曹監督は辞任の可能性が高いと報道されている。もし現実になった場合、一時代を築いた名将の「後」の湘南を引き継ぐのは難しい仕事になるだろう。
曹監督も消極的なチームに呆れた1戦。
10番を背負った生え抜きの菊池大介も「監督依存」を強く感じていたという。
「曹さんの言葉が本当はすべてじゃないですけど、若手とかはすべてになってしまう選手が多かったと思います。曹さんは自分の考えを伝えたいという想いと、あと半分は自分たちで考えてという意図があったと思うんですけど、言われていることだけをやろうという選手もいた。自分たちが試合の中で考えて変える力をつけていかないと、J1のトップレベルになるのは難しいかなと思います」
菊池の言葉を象徴する試合があった。
9連敗目を喫したFC東京戦(0-3)、曹監督はリスクを冒すフリをして消極的な戦いをした選手たちに呆れ、テクニカルエリアにほとんど立たなかった。監督に言われて気付いて戦うようでは、プロのチームとは言えないという想いがあったからだ。
昨年のチームは、自分たちのサッカーがうまくいかなくても臨機応変に戦えていた。選手が曹監督のサッカーを理解しつつ、状況に応じてアレンジして強くなっていった。チームも選手も「自立」していたのだ。
だが、曹監督が期待した今季のチームは、最後まで自立ができなかった。曹監督が「やれる」と思っていても、選手が消極的になってしまう。高山薫は「単純に力が足りなかった」と今季のチームの力不足を認めていたが、自立に至るまでの力がそもそもなかったということだろう。
「降格に1%も選手の責任はない」と監督は言ったが。
降格が決まった大宮戦後、曹監督は目を真っ赤にして「降格に1%も選手の責任はない」と言った。チームをまとめきれなかった。うまくマネジメントできなかった監督の責任はあるが、少なくとも相手との真っ向勝負から曹監督は逃げなかった。
選手は、連敗中も逃げずに曹監督のサッカーを自分たちの手で具現化しようとがむしゃらに戦えていただろうか。監督は選手を信じていたが、選手は自分を信じ切れず、監督に下駄を預けたのではないか。試合に勝つための練習だが「いい練習をした」ことに甘え、曹監督の懐の深さに甘えた選手の意識にこそJ2降格の最大の要因があったように思える。