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香川と清武の違い、本当に知ってる?
トップ下論争の前提を整理してみた。 

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西川結城

西川結城Yuki Nishikawa

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2016/10/24 11:00

香川と清武の違い、本当に知ってる?トップ下論争の前提を整理してみた。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

香川真司は細かいスペースでの受けなおし、動きなおしに真骨頂がある。縦に速い攻撃にはマッチしづらいが……。

昔は「僕、真司くんみたいな選手です」と言っていたが。

 有名なエピソードがある。清武が2011年の韓国戦に途中出場し代表デビューを飾った際、同じ右サイドでコンビを組んだ内田篤人は清武のプレースタイルを知らなかった。

 試合中、「どんなプレーが得意なの?」と内田に聞かれた清武は、「僕、真司くんみたいな選手です」と答えたという。ちなみに、その試合で清武は2アシストを記録している。

 あれから5年。清武も今では、ドイツを経由してスペインで勝負する日本人MFに成長した。そして香川と清武は今、確実に似て非なるプレースタイルの選手になっている。誰もがわかっているようで、具体化されていない2人の違い。今回はそれを明文化し、あらためて整理していきたい。

香川の特徴は、近い距離と狭いスペースで生きる。

 トップ下・香川真司。その特徴を列挙していく。

・中盤エリアでボールを引き出す動き。相手が密集する狭いエリアでも、縦パスを受けることが得意。
・そこから自分に近い周囲の選手とパス交換・連係、または短い距離のドリブルで、敵を崩していく。
・理想形は、狭いエリアでの連係を経て、最後は自らがゴール前に侵入。ゴール・アシストと決定的な仕事で完結。

 フィジカルコンタクトが弱い部類の日本人の中でも、香川は殊更それが弱点である。香川が輝くための絶対条件は、味方との距離感。そして、縦パスを受けられる距離も関係してくる。

 例えば、ボールポゼッションで優位に立ち、チーム全体がコンパクトな状態でラインを高く設定している場合。

 選手間の距離は自然と短くなっているため、ボランチやDFからの縦パスも入りやすい。香川は密集地帯でそれを受けても、持ち前の技術でくるりと前を向くことができる。また敵に寄せられて苦手な対人プレーに直面しても、味方との近い距離を活かしてすぐにパスでボールを離すことができる。こうしたプレーの繰り返しで自らのリズムを作り、相手の間隙を縫う動き出しでゴールに向かう。

 スプリントは速くないため長いレンジのドリブルは得意としていないが、大柄な外国人DF相手に見せる、一瞬の俊敏性を生かした突破も効果的だ。

 香川はトップ下の中でも、アタッカータイプに分類される。味方を生かし、味方に生かされ、自らもFWを追い越しシュート。その出来不出来が、調子のバロメーターだ。

【次ページ】 清武は広いスペースで長いパスを出せるのが魅力。

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