Number ExBACK NUMBER
“試合勘”とは一体何なのか?
日本代表DFの要・吉田麻也の答え。
posted2016/10/21 17:20
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph by
Takuya Sugiyama
試合勘。
ここ最近の日本代表戦では、やたらとこのフレーズを耳にする。海外組の選手が所属クラブで出場機会を得られず「試合勘」が鈍ってしまい、それが代表でのプレーに悪影響を与えているんじゃないか。そもそも「試合勘」の鈍っている海外組ではなく、国内外を問わずクラブで結果を出しているフレッシュな選手を使うべきなんじゃないか、という声だ。
確かに10月のイラク戦とオーストラリア戦では、クラブでベンチ暮らしが続く海外組選手の不調が目に付いた。
今季のミランでわずか19分しか試合に出場していない本田圭佑はボールが足につかず、シュートは枠の外かGKの正面ばかりに飛んだ。9月はドルトムントで一度も先発しなかった香川真司も、ボールを持った場面ではほとんど見せ場をつくれず、好調時とはほど遠いプレーだった。
ただし、試合勘やコンディションは、外からじゃわからない。普段なら考えられないミスをする彼らの姿を記者席から見て、「試合勘が鈍っているせいだろう」と想像することはできても、それがどう影響しているのか、どんな感覚になるのかは、本人にしかわからない。
ならば、当事者に直接訊くしかない。
オーストラリア戦翌日、ロンドンのヒースロー空港からサウサンプトンに向かう車中で、吉田麻也に尋ねた。
試合勘に「僕自身も悩まされた時期があります」。
クラブで試合に出場できていない場合、試合勘やコンディションの部分で影響はありますか?
彼は過去の経験を踏まえて、頷いた。
「正直、あります。体が思うように動かなかったり、感覚が狂ってしまったり。特に体のキレやシャープさで勝負する前線の選手のほうが、影響は大きいのかもしれません。僕自身も、これに悩まされた時期があります。幸い、今シーズンはヨーロッパリーグやカップ戦にはフル出場できていますけど、昨季はカップ戦にすら出られない時期がありました。当時は、代表に合流しても危機感しかなかった。常に『少しでもミスをすれば、次はスタメンから外されるぞ』と思いながらプレーしていました。だからこそ、大差で勝っている試合でも絶対に無失点のまま終わらせること、その上で自分でもゴールを決めてアピールすることを強く意識していました」
その言葉どおり、昨季の彼は代表に合流しても、どこかピリピリしていた。例えば7-2で快勝した6月のキリンカップ・ブルガリア戦で、DFながら2ゴールを決めたときも、試合後の表情は厳しかった。2得点したことよりも、後半にあっさりと2失点したことを誰よりも悔しがっていた。