2016年の高橋由伸BACK NUMBER
カープの躍進を見て由伸巨人に思う。
“観客を楽しませる”意識はあるか?
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph byHideki Sugiyama
posted2016/09/18 08:00
9月10日、東京ドームで広島に優勝を許すことになった由伸巨人。今後“強く・楽しい”チームの構築はできるのだろうか。
派手に動かないのは「個の力」を信じたから。
そのうえで、記事は高橋由伸が動かない理由も書いている。
《就任1年目。由伸監督は初体験となる采配について「実際に俺らが何かして勝つ試合は正直、少ないと思っている。選手一人一人がいい成績を残すことが大事」と語っていた。主力であろうとバントやエンドランを使った原前監督の「動く野球」に対し、由伸監督は「個の力」を優先。これを意気に感じた選手がほとんどだった。》(9月13日)
高橋由伸が派手に動かない理由は「個の力」を信じたからだ。言ってみれば大人の付き合いだ。その姿勢を意気に感じたというなら応えてみせるのが大人の礼儀だが、なかなかそうはいかなかった。阿部慎之助の開幕からの離脱、外国人選手たちは不振に陥ったり、様子見としか思えない「調整」に時間を費やした。由伸監督は本当は動きたくても動けなかったのかもしれない。
最下位だったけど、長嶋元年はドラマチックだった。
同じ1年目でもあの人は激しく動いた。
天才バッターが引退後に即監督就任で青年監督。似た状況とあって、高橋由伸はあの長嶋茂雄の監督1年目と重ねられた。球団も自らそうした映像をつくってPRした。
長嶋茂雄の1年目は最下位。どこまでも劇的であった。幼かった私は第一次の長嶋監督のスタート年は記憶が無いが、後から調べてみるとテレビの視聴率はむしろ良かったという。青年監督ならではの荒削りさと破天荒さが、前年までの川上野球と比べて新鮮だったのだろう。そして現役時代は大天才だった人が、監督となって苦悩する姿にも人々は球場やテレビで見入ったのだろう。長嶋元年はドラマチックだったのである。
監督1年目の高橋由伸に私がひそかに期待したのも同じであった。現役時代に同じく天才と呼ばれた高橋由伸が、監督業では思い悩む。人間臭さをまき散らす。想定外のそんな姿を想像したら、失礼ながらワクワクした。
しかし、由伸監督は私の予想をやすやすと超えてきた。個の力を優先し、どんと構えた。静かだった。
今年「球筋」を見きわめた由伸監督は、2年目の来シーズンはがらりと変わるのか。それともクールさに磨きがかかるのか。注目だ。