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黒田博樹は怒りさえチームのために。
「カープという“原点”に帰って」
posted2016/09/18 11:00
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Hideki Sugiyama
広島カープが優勝を決めた9月10日の東京ドーム。
巨人が2-1とリードして迎えた4回表、広島の攻撃。ここでカープは鈴木誠也、松山竜平の連続本塁打で3-2と逆転に成功する。被弾したマイコラスは、その後がいけなかった。次打者の安部友裕に対して、死球を与えてしまった。イラつき、自棄になったように見えなくもなかった。
そのとき、三塁側ダグアウト横でイニング間のキャッチボールをしていた黒田博樹が、この死球に激怒した。
マウンド上のマイコラスに対して何やら言葉を投げつけ、両腕を開いて抗議の姿勢を示したのだ。
このジェスチャー、ほぼ「メジャー流」だった。
アメリカでの実績は、マイコラスより黒田の方がはるかに上である。メジャーリーグで黒田は79勝あげているのに対し、マイコラスはわずか4勝。
「格」の違いが、黒田の闘志に表れていた。
チームの士気に影響することには、ヘラヘラしない。
41歳を迎えてなお、黒田は気持ちの人である。
昨年、阪神の藤浪晋太郎と投げ合った時、2球続けてインサイドを攻められた黒田は、マウンド上に向かって一歩、二歩と歩みを進め、藤浪に対して怒りを露わにした。
その時のことを黒田は、「チームの士気に影響することだったので」と前置きして、こう話した。
「プロですから、自分の体は自分で守らなければならない。もし、あそこで僕がヘラヘラしていたら、それこそチームの士気にかかわります」
その日のマウンドを任された先発投手には、投球以外にも「出来ること」があるのだという。