“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
名門マルセイユは代表以上に過酷!?
酒井宏樹が醸す、非情のオーラ。
posted2016/09/09 11:30
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takuya Sugiyama
厳しい批判は真摯に受けとめ、自身のプレーに昇華させる――。
日本代表DF酒井宏樹は、今自身のキャリアの中でもかなり貴重な経験を積めていると言っていいだろう。
今年の6月にドイツ・ブンデスリーガのハノーファーから、フランスのリーグ・アンのオリンピック・マルセイユへ移籍を果たした酒井。彼が新天地として選んだオリンピック・マルセイユは日本のサッカーファンからすると、かつて元日本代表監督のフィリップ・トルシエ氏が指揮を執り、中田浩二氏がプレーをしたチームとしてくらいの認識しかないかもしれない。
だが、フランスにおけるマルセイユの存在は、非常に伝統的で、かつ世界的なビッグクラブと言ってもいい、名の知れた名門クラブなのだ。
カントナ、デシャン……フランスの英雄がいたクラブ。
過去に白と水色を基調にした伝統のユニフォームに袖を通した偉大な選手は数多くいる。
エリック・カントナ、ジャン=ピエール・パパン、現フランス代表監督のディディエ・デシャン、ローラン・ブラン、マルセル・デサイー、クロード・マケレレ、フランク・リベリー(現バイエルン・ミュンヘン)、サミル・ナスリ(現セビージャ)……と、レ・ブルー(フランス代表の愛称)の伝説的な選手たちがずらりと顔を揃える。
1993年には、フランスのクラブとして初めてUEFAヨーロッパチャンピオンズリーグを制した(※その後、リーグ・アンでの八百長疑惑問題が発覚し、トヨタカップの出場権は剥奪された)。
熱狂的なサポーターを持つクラブとしても有名で、フランス国内でも比較的治安が良くないマルセイユのウルトラスは時には過激で、スタジアムの雰囲気は味方につければこれほど心強いものは無いが、非常に結果に対してシビアな分、敗戦の後は張りつめた空気になる。
中でもパリ・サンジェルマンとの戦いは“フランスダービー”と称され、サポーターのボルテージはいい意味でも悪い意味でも最高潮に達する。
そんな歴史と伝統が染み付いたクラブに、酒井宏樹は加入したのだ。