“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
名門マルセイユは代表以上に過酷!?
酒井宏樹が醸す、非情のオーラ。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakuya Sugiyama
posted2016/09/09 11:30
マルセイユでの試合では、スピードのあるアフリカ系の選手に手こずっているという酒井。その厳しい場で鍛えられた技術は、必ず日本代表の力になるはずだ。
マルセイユ・サポーターの凄みは……他とは次元が違う。
マルセイユの昨シーズンは、リーグで13位に終わっており、ここ15年間で最も低い順位でのフィニッシュとなった。その現状を打破すべく、リスタートを切ったチームの重要な戦力として招聘されたのが酒井なのである。
マルセイユでは右サイドバックとして開幕スタメン出場を果たすと、3試合連続スタメンフル出場と存在感を示してから日本代表に合流している。
フランスでのこの3試合で、酒井は伝統の重みを十分に感じていた。
「マルセイユのサポーターは本当に厳しい。毎試合絶対に勝たなければいけないというプレッシャーをかけてくるし、勝ち試合しか認めてくれませんから」
世界中どのクラブにも熱狂的なサポーターは存在する。しかし、マルセイユのそれはちょっと次元が違う。
筆者は過去15年、毎年のようにマルセイユを取材してきたが、サポーターの声量がとにかく凄まじく、相手に対するプレッシャーも尋常ではないものがある。そして、前述したように殺伐とした雰囲気までも観客席に漂わせることさえあるのだ。
どうやら酒井も、それを肌で感じ取っていたようだ。これまでのクラブとは根本的に異質なものであるということも……。
「負けた試合で『次頑張れよ』なんて声は絶対に無い」
だからこそ、日本代表としてスタメンフル出場を果たしたロシアW杯アジア最終予選・初戦のUAE戦で、1-2と敗れた後にこう感じたという。
「マルセイユのサポーターはこんなに優しくないですよ。負けた試合で『次頑張れよ』なんて声は絶対に無い。でも、サッカーとはそういうもの。だからこそ……どんな試合でも勝たないといけないんですよ!」
UAE戦、彼のプレーの評価は決して高くはなかった。
積極的な攻撃参加の姿勢も見せたが、同サイドのMF本田圭佑との連携がスムーズではなく、決勝点となった2失点目も、UAEの選手を彼と大島僚太と香川真司の3人で囲い込みながらも、ボールを奪いきれず、大島の足が掛かりPKを与えてしまっていた。