話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
原口と酒井高がサイドを甦らせた。
開いて、揺さぶって、身体を張って。
posted2016/09/07 11:40
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
Takuya Sugiyama
敵地バンコクでタイに2-0の勝利。
先制点を奪った後から追加点がなかなか取れない。ミスからカウンターを食らってピンチになる。
UAE戦で出た課題をすべて解消することはできなかったが、それでもタイから勝ち点3を奪えたのは、いくつかの修正をしっかりできたからだろう。
「ちょっと中、中、足元、足元に行きすぎて、相手に簡単に的を絞らせてしまった」
宇佐美貴史がそう語ったように、UAE戦は攻撃が単調だった。そのために追加点を奪えず、最終的にひっくり返されて痛い敗戦につながった。
「真ん中だけではなく、外を意識させて中を攻撃すれば、よりチャンスを作れる。真ん中、外とバランスよく攻撃できれば必ず点が取れると思う」
岡崎慎司もそう発言していたが、中と外からバランスよく攻めることがタイ戦の勝利のポイントになるというのは、全選手の共通認識になっていた。
そして試合当日、選手はそれを実行に移し、サイド攻撃を徹底した。とりわけ機能していたのは、原口元気と酒井高徳の左サイドだ。
左アウトサイドに原口が張り、酒井高はセンターバックからボールを受ける時、相手のセンターフォワードとウイングの間に顔を出してボールを受けた。そのまま外に張った原口にボールを出し、プレーの選択肢を与えていた。原口はそのままドリブル、あるいはドリブルにいくと見せかけてパス交換と、多彩な攻めを見せた。
左で作って右で決める、というスタイル。
思い出したのは、ザッケローニ監督時代の左サイドだ。
長友佑都、香川真司、そこにボランチの遠藤保仁が参加してトライアングルを作り、右サイドに流れた岡崎慎司や本田圭佑が決める。
左で作って右で決める。
同じパターンのように見えて、ザック時代より迫力を増しているのは、右サイドの酒井宏樹と本田もラインを高く保ち、左右双方のサイドアタックが非常に効果的だったからだ。
酒井高はいう。
「右の圭佑くんと宏樹がかなり積極的に攻撃していたのでバランスを見ながらでしたが、自分の左サイドは元気をうまく使って攻撃できたと思います。試合前から、俺が元気の動きに合わせる、元気のアクションで空いたスペースに俺が入る、あるいは俺がオ―バーラップする、という話をしていました。元気が仕掛ければ先手、先手といけるんで、俺のことは見ずに自分の動きでやってくれ、と」