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レース中に12時間におよぶAT交換。
結果以上に、トヨタが手にした成果。
text by
大串信Makoto Ogushi
photograph byTOYOTA
posted2016/07/25 13:00
LEXUS RCのトランスミッション交換は、真夜中から翌日の昼まで12時間ぶっ通しという想像を絶する過酷な作業となった。
レースでは、クルマを鍛える、人を鍛える。
「自分の判断を誤ったためにドライバーにもチームにも迷惑をかけて責任を感じた」と大阪は言う。だが同時に、レース中にエンジンを交換するというハードワークを新人ばかりのチームに強いることをしないで済んだという安堵感も涙の原因だった。
「レースの結果は、我々の直接的な目的ではありません。クルマを鍛える、人を鍛えるという点では、本当にしっかりとC-HR Racingのポテンシャルを見極めながら必要な改良・改善を進めることができました。この経験は、次に出すクルマに活かせると思います。経験のない若いメカニックも成長してくれましたし、手応えを感じているはずです。昨年の12月からクルマをつくり始め、意味のある半年だったと思います」と、大阪はC-HR Racingと共に過ごした日々を振り返った。
あえてレースに不向きなATを採用した理由とは?
一方、LEXUS RCのチーフメカニックを務めていた高木実も同様の状況に直面した。
高木はTOYOTA GAZOO Racingがニュルブルクリンク24時間レースへの挑戦を開始して以来10年にわたって現場でドライバー・メカニックとして闘ってきたベテランメカニックで、LEXUS RCとしては2年目。万全とは言えないまでも、十分な用意をして臨んだレースだった。
じつはLEXUS RCは、前哨戦であるVLN2でトラブルを起こしていた。LEXUS RCが搭載しているのは、ニュルブルクリンク24時間レースに参戦するために、あらゆるチューニングを施しパワーを増大させたエンジンと、これに対応させた7速オートマチックトランスミッション(AT)である。改良は一品物ではなく、量産を意識し、トルクコンバーター式AT及び本体に工夫が施されているものの、「レースには不向き」とあきれられたコンポーネントでもある。
だがTOYOTA GAZOO Racingには、「市販車を鍛え、将来の開発に活かす」という大きなテーマがある。もちろん高木は国内で耐久性を確認はしているが、全長25km、大小170個以上のコーナーを持つニュルブルクリンクは、国内のテストでは再現できない負荷のかかるサーキットである。結局VLN2では、ATにトラブルが出てLEXUS RCはスタート直後にリタイアを喫してしまった。