錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
いま錦織圭に欲しい「Something new」。
2016年シーズン後半の戦略を考える。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2016/06/17 11:30
全仏の期待が大きかったゆえに、その後の反動も大きいということか……。芝の季節に向け、錦織の気持は切り替わるか?
マッケンローが持つ、テクニック以上の“何か”とは?
〈テニスコートの芸術家〉とも称されたマッケンローのサーブ・アンド・ボレーを主体としたプレーは芝で映え、ウィンブルドンでは1980年から5年連続で決勝に進出。うち3回で優勝している。しかし、高度なボレーのテクニック以上に得るものがあるに違いない。
伝説のチャンピオンが自分の側にいるという非日常的な高揚感、そういう人の言葉の重み、それによって得られる自信が重要なのだ。多くの選手が、いわゆるレジェンドコーチをつけて成功する所以である。
彼らが求めているのは新しい風、インスピレーションなのだろう。
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1年間にわずか4週間の特殊な季節だからこそ思い切ったことにもトライできる。
芝があまり得意ではないスタン・ワウリンカも「4週間だけ」という期限付きでリチャード・クライチェクをアドバイザーにつけた。
1996年のウィンブルドン・チャンピオンだ。この2年連続のベスト8がウィンブルドンでの最高成績である31歳は、「今までとは違う考え、何か新しいものをもたらしてくれる」と期待する。従来のコーチ2人に加わり、より強固なコーチングスタッフを形成するかたちだ。
他に例が無いほど熱心なコーチ、マイケル・チャン。
錦織とチャンとの師弟関係も早や2年半を迎えた。2人にとっての最初のシーズンに、マドリードでマスターズシリーズ初の決勝進出、初のトップ10入り、全米オープンでの準優勝と大躍進したことはチャンの功績としても高く評価された。
チャンと他のレジェンドコーチの役割を比較すると、変な言い方だが、よりコーチらしく、ラケットとボールを持っている時間がより長く、技術から態度にいたるまで指導の幅が広いという印象を受ける。
自分の武器を磨くこと、自信を持つこと、辛い練習は必ず報われること……真面目で強い信念の持ち主であるチャンが教えたことは大きかった。フィジカルも含め、全てはさらなるステップアップの下地になるものでもある。