錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
いま錦織圭に欲しい「Something new」。
2016年シーズン後半の戦略を考える。
posted2016/06/17 11:30
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Hiromasa Mano
クレーシーズンが終わり、舞台は芝へと移った。
燃えるような赤土のキャンバスに慣れた目に、芝のグリーンは柔らかい。五感から得るリフレッシュ効果で、苛酷なクレーシーズンを戦ってきた選手たちの心身の疲労も癒すかのようだ。そしてまた新たな戦いに挑むエネルギーが生まれる。長い1年を戦い続けるためには、〈変化〉が大切なのだ。
錦織圭にとっての芝シーズンも、ドイツのハレ大会で幕を開けた。1回戦から第1セットを落とす苦しい立ち上がりになったが、最近ATPが積極的に売り出している『ネクストジェネレーション』の一人、22歳のルカ・プイユだったことを思えば、第2セット以降を6-1、6-4に抑えたのは芝の初戦としては上々だろう。しかし試合中に痛めて治療も受けた左脇腹の痛みが引かず、2回戦を前に棄権してしまった。「ウィンブルドンまでには間に合うはず」というが、昨年も同じハレでふくらはぎを痛めて準決勝を途中棄権し、ウィンブルドンの2回戦の前にぶり返して棄権したという嫌な出来事が蘇る。
肉体的にも精神的にも気持を切り替えにくい時期に。
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棄権は今季初めてで、昨年11月のパリ・マスターズ以来となる。
パリは、錦織にとってはグランドスラムやマスターズシリーズと並んで大事な大会と位置づける楽天オープンを含めたアジアシーズン後、ヨーロッパに移ったタイミングだ。そのケースといい、期待値の高かったクレーシーズンのあと芝に移った直後のこのケースといい、パターンは似ている。
「ベスト4、決勝といけるチャンスがあると思っていた」という全仏オープンでベスト16に終わった脱力感から気持ちを切り替えるのは、冒頭に書いたほど容易なことでもなく、それが肉体にも如実なサインとなって表れる。
それでも今年のクレーシーズンの戦いぶりを見れば、フィジカルの向上は疑いようがない。