オフサイド・トリップBACK NUMBER
阿部勇樹、レスターの思い出と優勝。
「一番戸惑ったのは、名前のコール」
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byShigeki Yamamoto
posted2016/05/30 07:00
2010年の夏にレスターへ移籍し、ゴールも決めた阿部勇樹。彼の万能性はイングランドでも評価の対象だった。
「オカは周りにいい影響を与えて、戦う選手が増える」
――岡崎選手のプレーについては、どうご覧になっていました?
阿部:オカは攻撃ではもちろんですが、守備も本当に一生懸命やるから、真ん中でボールを取れる機会も多くなる。そこでさらに攻撃のスイッチを入れてくれるから、バーディーの裏に抜け出すスピードも生きて来たと思うんです。
最初の頃は、ボールがなかなかまわってこないような場面もあったかもしれない。でもオカは、ラストパスが出てこない時でも、常に体の向きやポジション取りを意識して、ゴール前に飛び出していける準備をしていた。そういう姿勢でプレーしていると信頼関係も出てくるし、オカの場合は、途中交替する時でも本当に悔しがっているのがはっきりわかる。
チームのためにひたすら走ってくれるし、攻撃のスイッチも入れてくれる。そして戦う気持ちも前面に出してくれる。ああいう選手がいるっていうのは、チームにとってすごく助かるんです。周りにいい影響を与えて、戦う選手が増えてくるわけですから。
阿部が目を奪われたカンテの貢献度。
――岡崎選手以外ですと、印象に残っている選手はいますか?
阿部:やっぱりカンテですかね。
シーズンが始まったばかりの頃は、ボールを奪っても、そこから攻撃に移っていくところで、少しもたついたりするような場面もあったように思うんです。
でも試合に出続ける中で、ボールを奪った後、シンプルにプレーするようになっていったし、後ろから後追いでボールを蹴りだして繋いだり、前線に顔を出す回数も増えていった。やっぱりボールを取るシーンはカンテのところが一番多かったと思うし、彼の貢献はとても大きかったと思いますね。
――阿部選手と同じボランチですから、余計に気になったのではないですか?
阿部:いや、実はそこはあんまり関係がなくて。
普通に試合を観ていても、カンテはチームが苦しくなった時にこそ頑張ってくれるし、ここに誰かがいて欲しいと思った時に、必ずそういう場所に顔を出す選手になっていた。僕はそういう選手こそが、本当の意味でいい選手だと思うんですよ。