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シメオネ「お前ら、泣くんじゃねえ」。
CL決勝、守れなかった最後の命令。
posted2016/05/31 07:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
AFLO
「運命だった」
A・マドリーの指揮官ディエゴ・シメオネは、試合後に意外な言葉を吐いた。徹底した実利主義を貫く彼が、まさか運命論者だとは思ってもみなかった。
ミラノで行われた今季の欧州チャンピオンズリーグ決勝で、A・マドリーはPK戦の末に敗れた。11度目の優勝を決めた勝者は、同じ首都マドリードのR・マドリーだ。
今年も欧州を征服したのは、スペイン勢だった。
史上初の“マドリード・ダービー”となった2年前の大会ファイナルも、R・マドリーが延長戦の末に劇的な逆転勝ちを収めた。昨年大会準々決勝での再戦でもレアルに屈したアトレティコにとって、今回のファイナルにかける執念には並々ならぬものがあった。
決戦の舞台は、シメオネとレアル監督のジネディーヌ・ジダンが、セリエAでの現役時代に鎬を削ったカルチョの殿堂“サン・シーロ”。試合の数日前には、レアルのMFベイルが「アトレティコの選手は誰一人としてレアルでレギュラーになれない」と挑発し、敵愾心を煽った。これ以上のお膳立ては難しい。
憧れの人はマルディーニだったラモスの一撃。
闘将シメオネが、4年半をかけて堅守とカウンターへ特化した異能のチームに鍛え上げたA・マドリーは、今大会準々決勝で昨季王者バルセロナを、準決勝では強敵バイエルンを破ってファイナルまで勝ち上がってきた。もはや彼らをダークホースとはいえない。
ただ、大舞台の場数を踏んだ経験度となると、CL決勝進出3回目のアトレティコに対し、通算14度目のレアルに分があった。
ファイナル独特の緊張感の中で、先手を取ったのも“白い巨人”だった。
6分の好機は相手GKオブラクに防がれたが、15分のFKではMFベイルの技ありアシストを経て、ゴール前に詰めたDFセルヒオ・ラモスが左足で触って押し込んだ。ラモスの憧れは小さい頃からミランの伝説DFマルディーニで、その聖地サン・シーロでの決勝戦に、レアルの主将が一際高いモチベーションを持って臨んだのは想像に難くない。