濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
“学プロ上がり”の“どインディー”。
ガッツワールドが志すプロレスの王道。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byYukio Hiraku
posted2016/05/15 11:00
ガッツ石島(左)とミスター雁之助がリング上で雄叫び! ふたりとも学生プロレスの経験者だ。
古典的だが息をのむグラウンド技の応酬。
試合開始から20分にわたって続いたグラウンドのせめぎ合い。
チャンピオンのダイスケがインディアン・デスロックや弓矢固めを見せれば、雁之助は首四の字固め、クルック・ヘッドシザースでスタミナを奪いにかかる。多彩な“腕殺し”の攻撃も。これはダイスケの得意技であるエルボー封じの布石だった。
ミもフタもなく言ってしまえば、地味な展開である。なのに、見ていてまったく退屈しない。むしろ、流れるような技のつなぎを堪能し、「こんなテクニックも使うのか」と驚かされた。
シンプルでストレートな“プロレスそのもの”を味わう喜びと言えばいいだろうか。そういう試合が“どインディー”のリングで繰り広げられたのだ。
“どインディー”が受け継ぐ王道の遺伝子。
一度は引退しながら、一昨年の後楽園大会で復帰を果たし、久しぶりにベルトを巻いた雁之助は「俺はハヤブサの気持ちと一緒にリングに上がってる。だから負けるわけにはいかない」と言った。雁之助はFMW出身。今年3月に亡くなったハヤブサとは大学時代からの親友だった。来月で48歳になるが「今が一番調子いい。それだけの練習をしてるからね」とも語っている。
FMWという“元祖インディー団体”で新人時代を過ごした雁之助は、師匠であるターザン後藤からレスリングの手ほどきを受けた。ターザン後藤は全日本プロレス出身。つまり雁之助のプロレスは“ジャイアント馬場の系譜”にあたる。ダイスケとの試合で連発したジャンピング・アームブリーカーは、馬場がここ一番で使った技でもある。「インディーに何ができる」とナメられないためにも、腕の取り方一つにまでこだわってきた。
そしてガッツワールドの選手たちは、雁之助と闘い、時にアドバイスを受けることでプロレスの質を高めていった。“学プロ上がり”の根無し草は、いつしか根を生やし、太い幹を伸ばしていた。雁之助が必死で練習に励むのも、ダイスケをはじめとする「最初は全然、俺に敵わなかった」選手たちが「今ではみんなライバルになった」からだ。