オフサイド・トリップBACK NUMBER
ダイヤモンドを使いこなす条件とは。
なぜハリルはいま新布陣を試したか。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byAFLO
posted2016/04/12 10:30
4-3-1-2と言えば、ACミラン。ピルロをガットゥーゾとセードルフが支え、カカ、シェフチェンコ、インザーギで点を取る。美しい。
南ア大会以上の成績を収めるという大目標を忘れない。
日本代表は2次予選において、8試合で27点を奪っている。またランキングが下位のチームほど、守備を固めてくる傾向が強くなるのも事実だ。それを踏まえれば、最終予選では、極端に引いて守られるケースが多少減ることは想像できる。
だが対戦相手のレベルも上がる以上、基本的にはゴールも奪うことが難しくなると考えるのが自然だろう。つまり最終予選では、より少ないチャンスを、より確実に活かしきることが求められる。
さらに言えば、そもそも日本代表には、W杯で南ア大会以上の成績を収めるという大目標があるはずだ。この目標を達成するためには、南ア大会やブラジル大会よりもチームの総合力が上積みされていなければならない。守備においても、攻撃においてもである。
では、いかにして総合力を上積みしていくか。
速く攻めるためにこそ、上手さが必要なのだ。
ちなみに「縦に速いサッカー」という攻撃のコンセプトに関しては、拙速なプレーが増えた、日本が目指してきたパスサッカーやポゼッションゲームとの相性が悪いのではないかという指摘もよく耳にする。
しかし安易な議論はさけなければならない。
この種の批判の根底には、パスサッカーとカウンターサッカーに対する二元論的発想がある。パスサッカー=テクニックとポゼッション、攻撃を重視する良質なサッカー。カウンターサッカー=フィジカルとスピードを重視する、守備的でクオリティーの高くないサッカーという、ステレオタイプだ。
しかし今日のサッカー界では、パスサッカーとカウンターサッカー(縦に速いサッカー)は、対立する概念ではない。逆にパスサッカーで点を取るためにこそ、スピーディーな展開の重要性が認識されるようになってきている。
バルセロナで起きた変化や、W杯ブラジル大会におけるドイツ代表のアプローチは言わずもがな、現在は昔ながらの「遅攻」で結果を出しているチームを探し出す方が難しい。
これは、「うまい」と「速い」は抵触しないとも言い換えられるだろう。むしろ速くプレーするためにこそ、足下の技術が求められている。
この議論は、攻撃と守備の関係にも当てはまる。「攻撃をしている時に、いかに組織をキープできるかが鍵になる」と、ハリルホジッチ監督が強調する所以だ。