オフサイド・トリップBACK NUMBER
ダイヤモンドを使いこなす条件とは。
なぜハリルはいま新布陣を試したか。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byAFLO
posted2016/04/12 10:30
4-3-1-2と言えば、ACミラン。ピルロをガットゥーゾとセードルフが支え、カカ、シェフチェンコ、インザーギで点を取る。美しい。
4-2-3-1でゴールを奪えないことが全ての発端。
とはいえ岡崎の覚醒によって、日本代表が抱える問題が雲散霧消したわけではない。アフガニスタン戦における岡崎のゴールは、システムや組織で崩した結果というよりは、彼自身のコンディションの良さとフォワードとしての進化に負うところが大きいからだ。
似たようなことは、4-2-3-1で試合に臨んだケースについても指摘できる。語弊を恐れず言えば、最近の日本代表では、攻撃が手詰まりに陥ってしまう場面が少なくない。4-3-1-2へのシステム変更が、まだifのシナリオの一つに過ぎないことを考えれば、4-2-3-1の問題の方がはるかに深刻だ。
たしかにシリア戦の前半の内容は、ザッケローニ体制以来の主力組で4-2-3-1を敷いて臨んだ場合に、どれだけのプレーが展開できるかという水準を示した。酒井高徳は、代表におけるベストゲームといえるようなパフォーマンスを披露している。前半21分、岡崎のオーバーヘッドシュートに至るまでのシークエンスなども、まさに圧巻だった。
だが視点を変えれば、あれだけのチャンスを作りながらもゴールをなかなか奪えず、相手のオウンゴールの1点だけで前半を終えてしまったのも事実だ。
ゴールに近づくほどスピードが落ちる現象の理由。
理由の一端ははっきりしている。日本代表が4-2-3-1で戦った場合、デフォルトでは両サイドの攻撃的MFが開いていても、アタッキングサードにボールが入った途端に、選手が中央に集まってしまう癖が残っているからだ。結果、ゴール前のスペースは自ずと狭くなり、シュートに持ち込むためには、トリッキーなコンビネーションプレーや個人技に頼らざるを得なくなってしまうのである。
このような傾向は、アタッキングサードでのプレースピードの低下も招いている。ハリルホジッチ監督自身が、ピッチをワイドに使ったダイナミックな展開と、縦方向に速いサッカーの重要性を一貫して説いてきたにもかかわらずだ。
日本代表の試合では、「各駅停車」でパスをつなぎながら攻撃を組み立てていくプロセスをいまだに多く目にする。仮にアタッキングサードまで素早くボールを運ぶことができた場合でも、選手たちは細かなワンツーやポジションチェンジ、ピック&ロールなどで崩そうとするため、攻撃のテンポは落ちてしまう。本来ならば、敵のゴールに近づけば近づくほどプレースピードを高めていかなければならないが、逆の現象が起きてしまうのである。