フットボール“新語録”BACK NUMBER
ペップの“鬼軍曹化”に選手は不満。
バイエルンが一触即発の火薬庫に。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byAFLO
posted2016/02/08 11:30
2月6日のレバークーゼン戦では9試合ぶりの無得点でドローに終わったが、グアルディオラ監督は選手たちを称える気遣いをみせた。
選手補強の全権がないことがストレスの原因に?
士気の乱れが、ピッチに影響しないわけがない。後期開幕からハンブルクとホッフェンハイムに2連勝したものの、2月6日のレバークーゼン戦はスコアレスドローに終わってしまう。
相手の中盤を抑えるために“問題児”ビダルを今年初先発させたが攻撃面でブレーキになり、さらにシャビ・アロンソがイエロー2枚で退場になってしまった。
おそらくペップは残り4カ月であれば、選手に嫌われても乗り切れると考えているのだろう。ムチで打ち、限界を引き出すラストスパートだ。だが、それには痛みを伴う。ペップの鬼軍曹化は、まだプラスの効果よりも、ハレーションの方が大きい。
ハッピーエンドにならないことを前提として、敗因探しを始めたメディアもある。
バルセロナのダニエウ・アウベスはスペインのラジオ局『オンダ・セロ』のインタビューで、こう語った。
「ペップがバイエルンで気に入らなかったのは、(選手補強の)全権を持てなかったことではないか。マンチェスター・シティにはそれがある」
ペップは2013年夏にバイエルンの監督に就任したとき、ネイマールの獲得を望んだと言われている。だが、クラブはそれを断った。今季獲得したビダルも、ペップの希望でなかった可能性が高い。
「誰を獲得するかを決めるのはクラブだ」
ペップは会見で不満をにじませたことがあった。理想の選手を集められない葛藤を、ずっとバイエルンで抱えていたのかもしれない。
不満のブレーキが外れ、バイエルンは火薬庫に。
もちろんバイエルンとの契約を延長しなかった理由は、それだけではないだろう。アウベスは過去のインタビューで「ペップのバルサでの4年目は、監督が何をしようとしているかすべて予測できた」とマンネリに陥っていたことを告白している。ペップは同じ過ちを繰り返さないために、最初から3年限定と決めていたに違いない。
ペップがドーハ合宿でネジを締め、リアリズムを追求しているのを見たとき、パフォーマンスは必ず向上すると思った。だが、サッカーは机上の理論で操れるほど単純ではないらしい。様々な人たちの思いが複雑に絡み合い、不満のブレーキが外され、バイエルンが火薬庫と化している。
戦術には2種類ある。ピッチ内の戦術と、ピッチ外の戦術だ。ラスト4カ月、CL優勝の鍵になるのは、どうやら後者のようだ。