沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
200勝ペースで勝ち続けるデムーロ。
外国人騎手の強さの秘密を徹底解剖。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/01/30 08:00
以前のルメールとの対談では、田辺裕信や岩田康誠の名前を注目騎手としてあげていたデムーロ。
日本人騎手にも影響を与えたデムーロの騎乗法。
昔から「馬七人三」と言われているように、走るのは馬であるから、いい馬に乗ってこそ、いい結果を出すことができる。彼らが勝ちまくる一番の理由は「いい馬に乗っている」という、きわめて当たり前のことになるわけだが、では、彼らが質の高い騎乗依頼を呼び寄せるのはなぜか。それは、優れた騎乗技術に裏打ちされた好騎乗を繰り返しているからだ。
まずはデムーロ。彼の技術の高さがよくわかるビッグレースは、ヴィクトワールピサで制した2010年の有馬記念と、翌'11年のドバイワールドカップだ。どちらのレースでも、道中ややペースが落ちたところで一気に動いてポジションを上げた。先行馬との差を詰め、そこにおさまってラストスパートをかけるタイミングをはかり、見事に勝利した。
あのように道中で大きく動くと、馬にスイッチが入ってしまい、抑えが利かなくなって暴走に近い状態になる危険があるのだが、デムーロはほかの馬でも恐れずに動き、そこで騎乗馬の力を溜める。その影響だろう、最近は日本の騎手も道中大きく動くことが多くなった。
ルメールの先行力、ムーアのイン急襲。
次にルメール。'05年、ハーツクライでディープインパクトを破った有馬記念や、'09年、ウオッカで勝ったジャパンカップなどで見られたように、溜める競馬で結果を出してきた馬で先行し、最後までスタミナをもたせてしまう技術がある。
特にウオッカは、ゲートから出して行くと凄まじい勢いで掛かってしまうので、やわらかく当たって折り合いをつけなければならない馬だった。が、ルメールは出して行ったうえで、力ずくにも見える抑え方で折り合いをつけた。
そしてムーア。どうやら好みの問題らしいのだが、彼は、最後の直線で内を突くことが多い。ジェンティルドンナで'14年のドバイシーマクラシックを勝ったときや、ラストインパクトを昨年のジャパンカップで2着に持ってきたときなどは、内の省エネコースで脚を溜め、馬群の隙を見つけると自転車のハンドルを切るかのように手綱を動かして進路をクイッと変え、抜け出した。