フットボール“新語録”BACK NUMBER
グアルディオラが最後に狙うのはCL。
理想からリアリズムに舵を切った!?
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byGetty Images
posted2016/01/27 10:40
今季限りでバイエルンを去ることが決まっているグアルディオラは、プレミア行きが取り沙汰されている。
ロッベンすら守備のためにはベンチなことも。
最終ラインが2バックではなく3バックになれば、その分、中盤の人数が1人減り、パスコースは少なくなる。だが、カウンターのリスク管理に関してはより安定する。
バイエルンの最大の課題は、カウンターによる失点だ。その弱点を補うために、攻撃力の低下には目をつぶり、守備にやや重心を移した――今回の微修正をそう解釈できる。
実際、選手起用にも“守備へのシフト”が見て取れる。ハンブルク戦前、ビルト紙はオランダ代表のロッベンとコマンがポジションを争っていると報じ、どちらが出るかは五分五分と予想していた。
ペップが選んだのは19歳の後者だった。
コマンはスプリントに長けているだけでなく、守備を厭わない献身性があり、ハンブルク戦の後半34分には自陣ペナルティエリア前に戻ってカウンターを潰した。ロッベンよりも泥臭い仕事ができる。
ドリブルの破壊力だけならロッベンの方が上だが、守備を考えると、コマンの方が全体のバランスが整う。
理想は浸透した。あとはリアリズム。
実は1月にドーハで行われた合宿中から、“守備シフト”はすでに見えていた。ペップの指示が、攻撃よりも守備に関してのものが多かったのである。
ペップの練習は常に攻守が一体となっているが、たとえば次のメニューはより守備側に注文をつけるものになっていた。
長方形のエリアの外側にフリーマンの選手が2人立ち、内側にチームAが3人、チームBが3人入るメニューで、つまりボールを持っている方が5人、守る側が3人というルールだ。守備側は2つのパスコースを同時に切りながら、さらにボールに詰めなければならない。
ペップはコスタやコマンにも容赦せず、高い守備センスを求めた。たとえばチームメイトが相手のボール保持者に詰めたら、少し距離を取り、2つのパスコースに届く位置にポジションを取って、どちらにパスが来ても反応できるようにしておく。
今、ペップは最後の仕上げに取り掛かっており、現段階においてもはや理想を唱える必要はないのだろう。それはこの2年半に嫌というほど繰り返してきた。パズルの最後のピースとなるのは、揺るぎないリアリズムだ。