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浦和の9番、10番、13番に新たな主が。
偉大すぎる先人は重圧か、刺激か。
text by
轡田哲朗Tetsuro Kutsuwada
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2016/01/21 10:40
年末のJリーグアウォーズにも登場した武藤(左)と柏木。重たい背番号は、彼らの成長を加速させるだろうか。
前任者・鈴木啓太から突きつけられた挑戦状。
前任者は、1月10日の現役引退会見の際、背番号について言及した。実際には、すでに昨年末には高木が新しく13番をつけることは決まっていたそうだが、その場でクラブスタッフに「まだ発表されていないんですね」と確認を取った上で、こう発言した。
「15年間背負ってきたので、僕の印象や残像は残っているはず。だから、早くそれを変えるような活躍をしてほしい。逆に言えば、僕からの挑戦状ではないけど、乗り越えられる選手につけてほしい」
高木自身も、その重みを分かった上で自らの意志で背番号を選んだという。
「この背番号の重みというのは、去年1年浦和でやって自分も知っているし、この背番号をつける意味というのは十分に分かっているつもりです。悩んだ部分もありましたけど、こういうチャンスがある時に引き下がりたくない気持ちもあった。なかなかいただけない番号ですから」
高木は浦和加入初年度になった昨季、背番号に「31」を選択した。プロ野球選手として活躍した父の豊さんからの助言や、自身の名前の総画数と同じであることなど、さまざまな理由があったという。「自分は特に、背番号を変えるときは、選択肢の中からじっくり考える。何となく番号が持つ意味は自分の中に持っていたい」と話すように、背番号にこだわりを持つタイプの選手だ。
昨季は、なかなか最初のゴールが決まらなかったことで焦りを生んでしまった。だからこそ「最初のチャンスを決められるように準備したい。点を取れるときは、自然と自分のところにボールが来て、流し込める。それは、過剰な点を取りたい気持ちではない。常に平常心で、静かな燃えた状態を維持しつつやっていきたい」と、話した。
重たい番号を背負うことについて「自分の意志で決めた」という強い決意を内に秘め、新シーズンでの躍進を誓う。前任者の挑戦状に、立ち向かう準備はできている。
変えることができるのは未来だけだ。
背番号の印象と選手のイメージは、どうしても密接に関わり合う。浦和というクラブでは、特にそうかもしれない。番号が持つ意味とプレッシャーや、偉大な前任者の印象など、プレッシャーに変わる要素もあるかもしれない。
だがそうしたものは、柏木の言葉と考え方が解決してくれる。
「自分らしいプレーをして優勝につながれば、あの時の10番は柏木だったと思ってくれる」
変えることができるのは未来だけだ。それぞれが自分のできる最高のプレーと個性を発揮すれば、その印象にナンバーは塗り替わる。背番号という名のとおり、前に立つものではなく、背中から選手の後ろについてくるものなのだ。