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阿部勇樹が天皇杯後に語った「規律」。
浦和に必要な、短所と向き合う勇気。
posted2016/01/15 10:30
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph by
Toshiya Kondo
新年最初の試合が終わる笛がスタジアムに響きわたる。
ピッチに座り込む赤いシャツの選手がいるなかでも、阿部勇樹は、スクッと立ったままだった。腰にやった両手でパンパンと頬を叩き、ピッチサイドのドリンクボトルで給水すると、そのボトルをポンと地面へ投げた。ボトルが少し乱暴に転がる。阿部の心の揺れ、悔しさの熱さを物語るように見えた。
2016年1月1日、天皇杯決勝戦。浦和レッズはガンバ大阪に2-1で敗れた。浦和レッズがタイトルへ向かう階段の前にガンバ大阪が立ちはだかるのは、これが初めてではない。ちょうど1カ月余り前にも、チャンピオンシップで敗れている。
しかしこの日、浦和レッズに対して多くの人が抱いた「またしても……」という想いは、ガンバ大阪に勝てないということだけでなく、「タイトルを獲りきれない」赤い悪魔の姿だったかもしれない。
「来年、再来年ということだけじゃなく、タイトルを獲ることができれば、その先にまで続いていくことになるのかなって思う」
準決勝に勝利して決勝進出が決まったとき、阿部はそう語っている。
長所は大事。しかし短所の改善はもっと大事。
2012年。残留争いで苦しんだチームの再生を誓い、阿部は英国から戻ってきた。サンフレッチェ広島で指揮を執っていたペトロビッチが、新監督に就任したタイミングでもあった。
あれから4シーズンが経過。代表クラスの選手を獲得する補強は続いているが、2015年の1stステージ以外にタイトルは無く、結果という意味ではすっきりしない。
「なんで勝てないのか? なんで、なんでと思う」
決勝戦後、そう口にする選手は多かった。
「みんなと話し合ったけれど、理由がわからない」と話す選手もいた。
しかし、阿部は迷いなく言葉を発した。
「もちろんいいものはそのまま伸ばして続けていくべきだと思う。でも、足りないものをどれだけ上げていけるかってところが大事。監督もよく話しているけれど、規律という部分が足りない。やっぱり勝っているチーム、獲っているチームは、下(足りない)のところを上げて来ているから。自分たちもそれをもう、やっていかなくちゃいけないんだけど。やっぱりね、チャンピオンシップも含めてね……」
そうして小さなため息をつく。やらねばならぬことは認識している。にもかかわらず、出来ていない現実が敗戦を導く。