“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
4-1-4-1は東福岡の“信念”である。
17年ぶり選手権制覇への道のり。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph bySho Tamura/AFLO SPORT
posted2016/01/12 12:25
「最高の舞台で胴上げしてもらえた」と語る森重監督。インターハイ連覇でも拒んだ胴上げが、ついに実現。
ついに赤い彗星、復活!
かつて志波が屈辱の一戦を味わってから、まるで執念にも似た覚悟を見せたように、森重もまた自分の道に嘘をつかず、まっすぐに歩み続けることになった。
そして、ついに「赤い彗星、復活」を印象づけるインパクトを全国に与えるときがやってくる。
2014年。この1年は、東福岡にとって重要な年となった。1年時から不動のレギュラーとして君臨して来たMF中島賢星(現・横浜FM)を始め、増山朝陽(現・神戸)らが3年生まで成長し、能力の高い選手がズラリと揃ったのだ。
強烈な個性を持つ選手を適材適所に配置したチームは、68mをフルに使ったダイナミックなサッカーを展開し、インターハイ優勝を成し遂げた。森重にとって監督就任から12年目、ついに掴んだ全国制覇。次なる目標はコーチ1年目以来の選手権制覇だった。だが、選手権は3回戦で静岡学園にまさかの敗戦。
「悔しさしかなかった。でも、インターハイを制したことで、全国で優勝するための道が見えた。優勝するためのメンタル、テクニック、フィジカル、スピードの基準が見えて、選手達にどの辺まで要求すべきかが少し見えた」(森重)
そして2015年。この手応えが結実の時を迎えた。
全国優勝するチームとはどういうチームかを知る。
優勝メンバーがごっそり卒業し、スタメンの顔ぶれは大きく変わり、当初は「今年は厳しい」と言われていた。
「まだまだ模索状態。飛び抜けた個もいないから、まずは選手一人一人がチームのためにプレーできるか。時間はかかるだろうが、少しずつスピードを上げながら、チームを作っていこうと思ってる。しんどい1年になるだろうね」
森重自身も今のチームを率い始めた当初はそう言っていたが、目の奥は鋭く光っていたように記憶している。
「今年の選手達は、『全国優勝するチームとはどういうチームか』を知っている分、僕らの要求に素直に応えようとする姿勢を持ってくれていた。なので、こっちはどう彼らにアプローチをしていくべきなのか、と。『ヒガシのサッカー』というものがベースにあって、明確な役割がある。その中で今いる選手達の良さを引き出していくにはどうすべきか。そう考えた時、今年は(中村)健人にせよ、(藤川)虎太朗にせよ。ドリブルよりもパスやシュートの質が高いので、よりゴールに近い位置でプレーをさせたいし、より細かいパスを繋いでいくようにしないといけないと考えた」(森重)