プロレスのじかんBACK NUMBER
オカダが勝ち中邑はWWEの“世界”へ。
そして棚橋が言葉を失った1・4。
posted2016/01/08 12:00
text by
井上崇宏Takahiro Inoue
photograph by
Essei Hara
棚橋弘至は、すべてのレスラーがライバルだと考えているが、その関係性は「すべて自分が軸である」とも捉えている。
たとえば「棚橋とオカダ・カズチカ」「棚橋と中邑真輔」「棚橋と柴田勝頼」――その関係性や物語性の強さで「オカダと中邑」「中邑と柴田」よりも自分が下回ることはあり得ないと思っている。そして、実はその中心軸に自分を置いた『新日本プロレス物語』を構築したのは、ほかでもない自分自身であることも自覚している。
これまでずっと、地味な作業を続けてきたからだ。
試合前には闘う意味付けを、試合後のコメントでは今後の展開を――何度も繰り返し繰り返し、自らの言葉でファンやメディアに伝えてきた。その作業を積み重ねることの重要性を誰よりも早く理解していたがゆえに、自分自身を“新日本のエース”というポジションに置くしかなかったからだ。プロレスの闘いとはリング上で行なわれているものだけではないのだ、と。
1・4のメインとは……その時代の主役になること。
「レスリングは日本が一番だと、世界中のレスラーが思ってると思うんですよ。今まで並み居る、日本人でレスリングが巧いと言われる選手、強いと言われる選手とやってきましたけど、AJはそれに劣ることなく……というよりも、それをも優る人間でした」
メインイベントで闘うオカダ・カズチカと棚橋弘至の両者が、リングに向かって長い花道を進んでいるとき、バックステージのインタビュースペースでは、セミファイナルでAJスタイルズを下し、IWGPインターコンチネンタル王座を防衛したばかりの中邑真輔がコメントを出していた。
1月4日、東京ドームで、新日本プロレス恒例の年間最大のイベント『WRESTLE KINGDOM 10 in 東京ドーム』が今年も開催された。
新日本最大ということは、すなわち、日本国内におけるプロレスイベントの最高峰ということであり、その“1・4(イッテンヨン)”のメインを務めるということは、「世界中のレスラーが、レスリングは一番だと思っている日本」(中邑)で最高の舞台を与えられたことになる。
この闘いは、その時代の日本プロレス界の“主役”を決める重要な一戦なのだ。
今年は、王者オカダに昨年夏の『G1 CLIMAX 25』を制した棚橋が挑戦するIWGPヘビー級選手権。最後に主役は誰になるのか――25,204人の観衆がそれを見届けに集まった。
結果は、レインメーカー3連発でオカダが35分を超える闘いを制し、王座を防衛するとともに、1年前のドームのリベンジを果たすことになった。