プロレスのじかんBACK NUMBER
オカダが勝ち中邑はWWEの“世界”へ。
そして棚橋が言葉を失った1・4。
text by
井上崇宏Takahiro Inoue
photograph byEssei Hara
posted2016/01/08 12:00
1年前に号泣したオカダが今年は棚橋にリベンジ。その勝因を「俺が新日本プロレスを上にやるんだという気持ち」と語った。
「この男にプロレス界の未来が懸っている」
「今日のメインイベントはもう本当に重要だね。IWGPだけじゃないものが懸かっていたと思うよね。このレインメーカーが勝ったっていうのは、ものすごく大事なことでね。間違いなく、この男にプロレス界の未来が懸かっているわけだから。まあ心配せずとも、レインメーカーがいるだけで(未来は)ついてくると思うけどね」
オカダの参謀役、と言ったらもはや主役のオカダに失礼だろう。オカダと常に行動を共にしている外道は、試合直後にこの闘いを振り返ってこう言い放った。
「乾杯しようか。綺麗に、“プロレス界の未来”に……」
そう言ってテーブルに用意されていたビールの栓を抜く外道に、オカダは「ちょっと真面目すぎます」と返してマスコミ陣の笑いを誘ったが、外道は、
「いや、真面目にやりたいんだ」
と制してオカダと乾杯をした。プロレス界の未来に。
「新日本のために捨て石になってもいい」
およそ10年もの長い間、自らの言葉によって日本プロレス界の未来に光を灯し続けてきた棚橋だが、過去に「新日本のために捨て石になってもいい。礎(いしずえ)になる」と発言したことに関してだけはミスをしてしまったと思っている。
それぐらい新日本の人気、経済状況が芳しくなかったことで口をついた言葉だったのだろうが、今になって考えるとあれは言い訳、逃げ道だったようだ。
「礎になってもいい」と当時は本気で思っていたことそのものは間違いない。そして、その流れのなかで、下からオカダが台頭してきた。自分の発言が言い訳だったと気づかせてくれたのは、そのオカダなのだ。
棚橋のプロレスラーとしての本当の未来は、自分が中心となって新日本プロレスを守り、躍進させることだ。現在、息を吹き返した新日本プロレスにおいて、棚橋はまさにその夢を叶えている最中と言える。
しかし――。