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「まったく歯が立たない相手ではない」
斉藤和巳に聞くホークス打線攻略法。
text by
小須田泰二Taiji Kosuda
photograph byHirofumi Kamaya
posted2015/12/21 10:30
ソフトバンクの元絶対エース・斉藤和巳。パ史上初の沢村賞複数回受賞者でもある。
全ての投球がイメージと一致したシーン。
斉藤氏がホークス打線攻略のヒントとして挙げた“あのシーン”とは。日本シリーズ第3戦、7回表のことだ。1アウト、ランナー1塁の場面。3番の柳田を迎えたところで、ヤクルトは“左キラー”の久古健太郎をマウンドへ送り込んできた。
「柳田に対して、アウトサイドとインサイドをうまく投げ分けていました。いつも野球を観戦する際、次はどんなボールを投げようか、僕自身、自分がマウンドに立っていると思って1球1球を追っているのですが、あの場面はすべてのピッチングが僕のイメージと一緒でした」
1球目。124キロのスライダーで見逃しストライク。
2球目。同じく124キロのスライダーで見逃しストライク。
カウント0-2で柳田を追い込んだ後、カットファストボール(126キロ)、シュート(133キロ)を投げてボールカウントが続いた。5球目の135キロのストレートはバットに当てられたもののファウル。続く6球目も137キロのストレートで攻めたが、ボールの判定となった。
もし李、松田にも丁寧な投球ができていたら……。
7球目がファウルとなり、フルカウントで迎えた8球目。ここで久古が投げたボールは、アウトサイドへのストレートだ。
「スライダーを中心としたピッチングで、どんどんインコースへと投げ込んでいく。インコース、アウトコースとスライダーを投げ分けて、スライダーを存分に意識させた。そしてここぞ、というときにインサイドへのきわどい球が入った。カウント3-2から、アウトコースへのストレートで空振り三振。さらに中村悠平捕手が1塁ランナーの盗塁を阻止して三振ゲッツー。柳田は1球もタイミングが合っていませんでした。ヤクルトのバッテリーが見せたシリーズ一番のピッチングだったと思います」
3番の柳田に対して、キャッチャーの中村は巧みなリードを見せた。もし続く4番の李大浩、5番の松田にも、柳田との対戦で見せたような丁寧なリードができていたら、ヤクルトにも勝機はあったというのが、斉藤氏の読みだ。