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「まったく歯が立たない相手ではない」
斉藤和巳に聞くホークス打線攻略法。
text by
小須田泰二Taiji Kosuda
photograph byHirofumi Kamaya
posted2015/12/21 10:30
ソフトバンクの元絶対エース・斉藤和巳。パ史上初の沢村賞複数回受賞者でもある。
短期決戦で投手が崩れることは致命的。
日本シリーズという短期決戦においては、打線よりもとくにバッテリーの力のほうが大きく影響してくるのだという。
「シリーズは4勝したほうが優勝するルールですから、先手先手でいかないといけません。スワローズの投手陣は、先手を打たせない状況にすることができなかった。ホークスの先発投手はどの試合も長いイニングを投げることができていたから、自分たちの形、リズムで野球ができていた。ローテーションの投手陣が総崩れしてしまったのは、真中(満)監督としても大誤算だったと思います。キャッチャーとピッチャー。バッテリーの出来というのは、守備の部分。弱者が強者に立ち向かうためには、まず守備の部分で粘り強く戦えないと、勝利に持ち込むことは難しいでしょう」
ヤクルトが勝つとしたらどんな形がありえた?
もしスワローズが勝つとしたら、どれだけ接戦に持ち込めるかが大事――。斉藤氏はシーズン前にそのように予想していた。さらに言えば、接戦に持ち込んで行くためにも絶対に先制点が必要だと思っていた。ただ、そんな予想とは裏腹に、スワローズの投手陣は総崩れし、ホークスにつねに先制点を奪われ、苦しい展開を強いられたのだ。
「先制点というのは野球においてすごく重要です。流れを作りやすくなる。結局、振り返れば、日本シリーズでスワローズが勝利した試合は第3戦の1回だけ。乱打戦となったものの、先制して接戦に持ち込めたからこそ、勝利をたぐり寄せることができていたのです」
スワローズの投手陣を崩したホークス強力打線。その攻略法について、ここであらためて聞いてみたところ、斉藤氏からは力強い答えが返ってきた。
「粘り強く、我慢のピッチングを続けるしかないですね。僕がマウンドに立ったとしても、マジックなどないです。ラインナップをまとめて抑えるなんて不可能でしょう。いかにして、流れを断ち切るか。いかにして点を線にしないか。
ヤクルトがそうした戦いを唯一見せることができたのが、第3戦だったと思います。とくに柳田(悠岐)を空振り三振に抑えた“あのシーン”は見事でした。あのシーンには、ホークス打線を攻略するヒントが隠されていたと思います。あのリードがつねにできていれば、もしかしたら結果が違っていたかもしれませんね」